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低用量ピル服用による不正出血 | 原因や受診の目安を解説

低用量ピルは、ホルモンを含む薬剤で、主にエストロゲンプロゲステロンの組み合わせにより
排卵を抑制し、妊娠を防ぐことを目的としています。

また、ピルは月経周期の調整や月経痛の軽減にも用いられ、多くの女性にとってより生活を快適にするための選択肢となっています。

不正出血は、多くの女性が経験することがある症状で、月経周期以外のタイミングでの出血を指します。
特に、低用量ピルを使用している場合、この症状が現れることがあります。

この記事では低容量ピル服用による不正出血の原因や受診の目安についてご紹介します。

低用量ピル服用中に不正出血が起こる原因

低用量ピルを服用中に不正出血が起こると不安になることも多いでしょう。
ここでは不正出血の原因をいくつかご紹介します。

低用量ピルを初めて服用した

低用量ピル内服飲み始めの周期は、ホルモンバランスの変化により不正出血が起こりやすいと言われています。

低用量ピルを服用することで、自分の体の代わりに女性ホルモンが補充されることになるため、
内服前とはホルモンバランスが変わります

ホルモンバランスが変わることで一時的に子宮内膜が不安定になり、
不正出血が起きてしまうことがあります。

また、低用量ピルの種類を変えたときや、しばらく休薬していて再開したときには、
1〜3か月ほど不正出血が起こりやすくなる傾向にあります。
この時期であれば、不正出血が続いていたとしても様子をみてもよいでしょう。

体が慣れてくると不正出血も減少する傾向にあります。
(参考1)

低用量ピルを服用し忘れた

エストロゲンとプロゲステロンが周期により増減することにより生理周期が起こります。

ピルを定期的に内服していると安定してホルモンが補充されるため、定期的に生理が来ることが期待できます。

低用量ピルを飲み忘れる期間が続くと、一時的に体の中に女性ホルモンが補充されない状態、
つまり女性ホルモンが減った状態になります。
すると体は「生理を起こす必要がある」と勘違いをして、出血が起きてしまうことがあるのです。
(参考2)

低用量ピルの効果や副作用についてはそれぞれの記事でも詳しくご説明をしているので参考になさってください。
「用量ピルの効果について医師が解説します」
「低用量ピルの副作用とは?中用量ピルとの違いも医師が解説」

低用量ピル以外の不正出血の原因は?

ここでは前述した低用量ピルが原因以外の不正出血の原因について解説します。
主に子宮の問題が原因の場合と卵巣の問題が原因の場合に分けたものがありますので確認していきましょう。

子宮の問題が原因の場合

骨盤臓器脱 

 骨盤臓器脱は、骨盤の中にある臓器(例えば膀胱、子宮、直腸など)が、支える筋肉や靭帯の弱まりによって、正常な位置から下がったり、外に出てしまったりする状態です。主に以下のような原因があります。

  • 出産: 特に大きな赤ちゃんを出産したり、複数回出産した場合、骨盤底筋がダメージを受けやすくなります。
  •  加齢: 年齢と共に筋肉や靭帯が弱くなり、支持力が低下します。
  •  肥満: 体重が増えることで骨盤底にかかる負担が増し、臓器脱が起こりやすくなります。
  •  慢性的な咳や便秘: これらも骨盤底に負担をかける原因になります。

骨盤内臓器脱になると、膣の入り口からピンポン玉くらいのものが出てくるため、股間に異物感を感じることがあります。
最初は力を入れた時だけ出ている状態になることが多く、それが下着に擦れることで出血を伴います。

子宮頸がん・子宮体がん 

子宮頸がんは子宮の入り口部分である子宮頸部に発生するがんであり、
子宮体がんは子宮の内側を覆う粘膜(子宮内膜)から発生するがんです。

子宮頸がんや子宮体がんでは、悪性の腫瘍が炎症を起こして出血することがあります。
この場合は出血量が多く、繰り返して出血するのが特徴です。

子宮頸がんは若い世代に多く、定期的にがん検診をうけていないと見落とされる可能性があり、
注意が必要です。(参考3)

また、子宮頸がんの主な原因は、ヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスの感染です。
このウイルス感染を防ぐため、10代のHPVワクチン接種が推奨されています。

子宮外妊娠 (しきゅうがいにんしん)

子宮外妊娠は、受精卵が子宮以外の場所に着床して成長する状態です。
最も一般的なのは卵管(おうかん)での妊娠ですが、卵巣や腹腔などでも発生することがあります。

子宮経管ポリープ 

子宮の出入り口である子宮経管にできるポリープで、子宮経管の細胞の増殖によって粘膜が隆起して生じる良性腫瘍です。
悪性化する可能性は比較的少ないとされていますが、性交時に出血することがあるためその際に気づくこともあるでしょう。

子宮内膜症 

本来は子宮内宮にしか存在しないはずの子宮内膜が、腹膜や子宮筋層内や卵巣などの子宮内宮以外の場所にできる病気です。
子宮内膜は本来生理で剥がれ落ちますが、子宮内宮以外に増殖した内膜は排出されることがなく、体内で癒着や炎症を起こしてしまい、出血することがあります。

卵巣の問題 

多嚢胞性卵巣症候群 

多嚢胞性卵巣症候群とは、卵巣に多数の小さな嚢胞(卵胞)ができる状態を指します。
これにより、ホルモンのバランスが乱れ、さまざまな症状が現れます。

卵巣がん 

卵巣がんは、女性の卵巣にできるがんのことです。
欧米人に多く、日本人には少ないとされてきましたが、食事の欧米化で日本でも増加傾向にあります。
卵巣がんは初期には症状が出にくいため、診断が遅れがちですので定期的な健診をするとよいでしょう。
(参考4)

性感染症

トリコモナス腟炎、淋菌感染症(淋病)、性器クラミジア感染症といった性感染症も不正出血が起こる可能性のある病気です。
性感染症に感染することで、子宮の入り口(子宮頚部)や膣内に炎症が起きます。
それにより、性交渉時に出血が起こりやすくなり、生理以外に出血が起きる場合があります。

性感染症が疑われる場合、不正出血以外にも排尿時・性交時の痛み、性器周辺のかゆみ、おりものの性状の変化などの症状があることが多いので確認してみましょう。
(参考5)

性感染症(性器ヘルペス・カンジダ・クラミジア)についてはこちらでも詳しく解説しているのでご参考になさってください。
「性器ヘルペスの症状とは?男性・女性ごとの症状も解説」
「カンジダの症状とは?原因や男性・女性の症状も解説」
「クラミジアの症状とは?男性・女性ごとの症状、検査方法も解説」

低用量ピルによる不正出血が止まらないときの受診の目安

低用量ピルを服用しているタイミングで不正出血が止まらない場合、以下に受診の目安をまとめました。
以下の条件にあてはまる場合はなるべく早めに専門医に相談することをおすすめします。

茶色、少量の不正出血の場合

低用量ピルを服用し始めの3か月や、ピルの種類を変えた場合には一時的にホルモンバランスが不安定になり不正出血が起こることが多くなります。
その場合の出血は茶色っぽい、少量の出血である場合が多いです。
おりものに混じって一度、もしくは数日間だけ少量出た程度であれば様子を見ても良いでしょう。
(参考6)

腹痛を伴う不正出血の場合

ピル服用の初期にはマイナートラブルの1つとして下腹部痛があります。

下痢を伴わない軽い腹痛の場合はピル服用初めの起こりやすいホルモンバランスの揺らぎによるものと考えて3か月は様子を見ても良いでしょう。

一方で普段とは異なる激しい下腹部痛が起こった場合、血栓症の初期症状や流産を疑うことがありますので注意が必要です。

このような場合はピルの服用を一旦中止して、医師の診察や検査を受けましょう。

以下に当てはまる方は、早めの受診をおすすめします。
・ピル服用開始3か月を過ぎても、不正出血が続いている
・出血量が多い
・子宮頸がん/体がん/卵巣がんの検診を1年以上受けていない
・下腹部痛、おりものの変化などを伴う
・閉経後の不正出血
 (参考7)

まとめ

低用量ピルの内服は、女性のライフスタイルをサポートする心強いツールです。
しかし、ホルモンの変動や、様々な疾患によって不正出血が生じることもあるため、正しい理解と対策が求められます。

低用量ピル内服中には自身の体調を観察して定期的ながん検診を受けましょう。
必要な時には専門医に相談することが、健やかなライフスタイルを築く鍵となるので上手に付き合うとよいでしょう。

【参考文献】
国立公衆衛生院 保健統計人口学部 田中千恵 林謙治 「ピルの薬理と使用方法について」 
山口大学医学部生殖・発達・感染医科学講座(産婦人科学講座)杉野法広 「「今月の臨床 不正出血の患者が来たら」臨床婦人科産科58巻3号(2004年3月)
参考文献3 厚生労働省 広報誌「厚生労働」2020年3月号
参考文献4 ドクターズ・ファイル
参考文献5 厚生労働省「性感染