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2025.04.16

高血圧と脳梗塞の関係性 | 高血圧とその他の合併症や治療方法を解説

高血圧は脳梗塞と非常に密接な関係にあり、最悪の場合、命の危険にさらされたり、後遺症が残ったりします。わが国の生活習慣病としてありふれている高血圧がなぜ脳梗塞につながるのでしょうか?

この記事では、高血圧と脳梗塞の関係性について詳しくお話ししていきます。

高血圧が続くと脳梗塞になる?

脳梗塞の一番の原因は高血圧です。高血圧が続くと動脈硬化が進行し、脳の血管が詰まりやすくなり、結果として脳梗塞を引き起こす可能性が高まります。

実際、血圧が収縮期血圧(上の血圧)で180mmHgもしくは拡張期血圧(下の血圧)で110mmHgを超える場合は、脳卒中(※)の発症率が6割以上になることがわかっています(人口1000人で1年間あたりの統計)。高血圧が予防できれば、日本人の脳卒中の発症を約半分に減らせるとも言われているほどです。そのため、将来的な脳梗塞の発症を防ぐためには、日常生活で高血圧を予防することが重要です。

(※)脳卒中:脳梗塞、脳出血、くも膜下出血などの総称

出典:一般社団法人 日本臨床内科医会「高血圧」

出典:厚生労働省 e-ヘルスネット「脳血管障害・脳卒中」

脳梗塞とはどんな病気?

脳梗塞は、脳の血管が詰まることで脳細胞への血液供給が途絶え、脳組織が損傷を受ける病気です。脳の血管が詰まると、その先の脳細胞に酸素や栄養が届かなくなります。それにより、脳の一部が機能不全に陥ったり、壊死したりすることで、さまざまな機能障害が現れるのが特徴です。脳梗塞は原因によっていくつかのタイプに分類されます。

  • アテローム血栓性脳梗塞

悪玉コレステロールなどが血管壁に蓄積して粥状の塊(プラーク)を形成し、これが血管を狭くしたり、剥がれた血栓が血管を詰まらせたりすることで起こります。

  • ラクナ梗塞

脳の奥にある細い血管が詰まるタイプの脳梗塞です。梗塞部位が小さいため、意識障害が起こりにくいとされています。

  • 心原性脳塞栓症

不整脈などの心臓疾患によって心臓内に形成された血栓が血流に乗って脳の血管に到達し、血管を詰まらせることで発症します。特に心房細動という不整脈がある人は、脳梗塞の発症率が2〜7倍に上昇すると言われています。

高血圧はこれら全てのタイプの脳梗塞のリスクを高めますが、特にアテローム血栓性脳梗塞の発症に深く関与しています。脳梗塞は、適切な治療によって治癒した後も再発することが多いため、継続して血圧管理に努めることが大切です。

脳梗塞の症状

脳梗塞の症状は、梗塞が起きた脳の部位や範囲によって異なりますが、多くの場合、突然発症します。前兆として、頭痛やめまい、手足のしびれ、舌のもつれなどが現れることがありますが、必ずしもあるとは限りません。

発症後には上述した症状に加え、片側の手足や顔の麻痺、感覚の低下、意識障害などの症状が現れることがあります。ろれつが回らなかったり、言葉をうまく喋れなかったりする症状が見られることもあります。

これらの症状は、脳梗塞の可能性を示す重要なサインで、一刻を争う状態です。治療が遅れると命の危険にさらされるだけでなく、後遺症が残る可能性も極めて高くなります。そのため、これらの症状に気づいたら、できるだけ早く救急車を呼ぶことが重要です。早期に受診し、迅速な診断と治療を受けることが、脳梗塞によるダメージを抑えるうえで必要になります。

高血圧のその他の合併症

高血圧の脳梗塞以外の合併症として、以下が挙げられます。

  • 脳出血
  • くも膜下出血(脳をおおうクモ膜の下で出血が起こる病気)
  • 狭心症(心臓の血管が狭くなる病気)
  • 心筋梗塞(心臓の血管が詰まる病気)
  • 心不全(心臓に水が溜まって機能が低下する病気)
  • 大動脈瘤(大動脈に大きなコブができる病気)
  • 閉塞性動脈硬化症(手や足の動脈が狭くなったり詰まったりする病気)
  • 慢性腎臓病(慢性的に腎臓の機能が低下する病気)
  • 糖尿病性腎症(糖尿病によって腎臓の機能が低下する病気)
  • 眼底出血(目の奥の毛細血管が詰まって失明する病気)

このように、高血圧は脳だけでなく心臓や腎臓の機能にも影響をおよぼしたり、深刻な血管の病気にもつながったりする可能性があります。これらの病気は致死率が高まるだけでなく、後遺症が残る可能性も高くなります。高血圧は全身状態に影響をおよぼす病気である認識を持つことが重要です。

高血圧が原因で起こる病気について詳しく知りたい方は、こちらもご覧ください。

高血圧の治療方法

高血圧症の治療は、主に薬物療法によって行われます。薬物療法では、血管を広げる薬(カルシウム拮抗薬、ACE阻害薬、レニン阻害薬など)、心臓の過剰な働きを抑える薬(β遮断薬)、余分な水分や塩分を排出する薬(利尿薬)などが用いられます。これらの薬は、それぞれ異なるメカニズムで血圧を下げる効果があるのが特徴です。

しかし、それぞれの薬には副作用もあり、合併症や患者の背景によって選択される薬が異なります。降圧薬の副作用や選択方法などについて詳しく知りたい方はこちらもご覧ください。

高血圧の改善方法

高血圧の改善には、食事療法や運動療法などによって生活習慣を改めることが重要です。推奨されている具体的な内容は以下のとおりです。

修正項目内容
減塩などの食事食塩の摂取量を1日6g未満にする野菜や果物、青魚などを積極的に摂取する(腎疾患や糖尿病の方は医師に明確な摂取量を相談する)
肥満状態の管理体格指数(BMI※)を25.0kg/m2未満に管理する
飲酒の制限1日のアルコール量を男性で20〜30ml以下(日本酒1合、ビール中瓶1本程度)、女性で10〜20ml以下にする
適度な運動毎日30分以上もしくは週180分以上の有酸素運動を継続する
禁煙喫煙や受動喫煙を避ける
その他ストレスのコントロールや防寒を心がける

(※)BMI:体重(kg)÷(身長(m))2で計算する

出典:非定非常利活動法人日本高血圧学会「高血圧の話」

これらの習慣を日常生活に取り入れることで、高血圧の改善につながります。高血圧症と診断されている患者さんは、適切な薬物療法や生活指導を受けるようにしましょう。

高血圧の改善方法については、こちらに詳しくまとめてあります。

まとめ

高血圧は脳梗塞で最も多い原因で、予防が極めて大事だと言われています。脳梗塞は治療のタイミングが遅れれば、致死率や後遺症が残る可能性が高くなります。定期的な血圧測定や生活習慣の改善によって、毎日の血圧管理に努めましょう。

参考文献

一般社団法人 日本臨床内科医会「高血圧」

厚生労働省 e-ヘルスネット「脳血管障害・脳卒中」

厚生労働省 e-ヘルスネット「高血圧」

非定非常利活動法人日本高血圧学会「高血圧の話」

非定非常利活動法人 日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン 2019(JSH2019)」