便秘が苦しいのはなぜ？ | 原因や対処方法、並行して起こりうる症状を解説

便秘はただ排便が滞るだけでなく、お腹の張りや痛み、不快感といった苦しさを伴うことがあります。

なぜ便秘で苦しい症状が起きるのでしょうか。この記事では便秘で苦しくなる原因や効果的な対処法、便秘薬や漢方薬の選び方、便秘に伴う様々な症状について解説します。

便秘が苦しい原因

便秘で苦しくなる主な原因は、腸内に便やガスが溜まることで腸が過剰に膨張し、周囲の臓器を圧迫するからです。横隔膜が圧迫されて呼吸が浅くなったり、胃が圧迫されて消化不良や吐き気が生じたりすることがあります。

普段、大腸ではぜん動運動（蠕動運動）により便がスムーズに移動しますが、この動きが弱まると便がお腹の中で停滞します。（参考1）便秘には大きく分けて「排便回数減少型」と「排便困難型」の2つのタイプがあります。（参考2）排便回数減少型では、大腸の蠕動運動が低下して便の移動が遅くなり、腹部膨満感や腹痛などの症状が現れるのが特徴です。排便困難型では、便意はあるものの排便がスムーズにできず、排便時の過度の怒責や残便感などを感じます。

便秘の状態が続くと、さらに便が硬くなり症状が悪化する「便秘の悪循環」に陥ります。また、腸が過敏になって便秘や下痢を繰り返す「過敏性腸症候群（IBS）」が生じたり、便秘が長引くことで痔や脱肛などの合併症を引き起こしたりする可能性もあるため、早めの対処が重要です。（参考3）

便秘が苦しい時の対処方法

便秘が苦しい時は、まず水分を十分に摂取し、食物繊維が豊富な食事を心がけましょう。適度な運動も腸の動きを促進します。

トイレを我慢せず、便意を感じたらすぐに行くことも大切です。温かい飲み物を朝に飲むと腸を刺激し、排便を促せることがあります。対処法だけで症状が改善しない場合は、医師に相談することをおすすめします。（参考3）

便秘の治し方

便秘を改善するには、生活習慣の見直しが基本となります。便秘解消にどの程度の水分が必要かについては明確なエビデンスはありませんが、1日に飲料水から最低1.2〜2リットルの水分を目安に補給しましょう。（参考4）（参考5）

食事面では食物繊維が豊富な野菜、果物、全粒穀物を積極的に取り入れることが大切です。食事により腸内環境を整えることで、善玉菌を優位にし、悪玉菌を抑制できるため、リラックスにつながる副交感神経を優位にできます。また、朝食をきちんと摂ることで胃腸が刺激され、自然な排便につながりやすくなります。（参考3）

適度な運動も効果的で、ウォーキングなどの有酸素運動は腸の蠕動運動を活発にします。排便時間を規則的にすることも重要です。毎朝同じ時間にトイレに行く習慣をつけることで、体内時計が整い排便リズムが作られます。（参考3）

こうした生活習慣の見直しを続けても便秘が改善しない場合は、医師に相談の上、薬物療法を検討しましょう。酸化マグネシウムや浣腸などが代表的な便秘薬ですが、便秘薬には浸潤性下剤や膨張性下剤、浸透圧性下剤など様々なタイプがあり、症状や便秘のタイプに合わせて選ぶことが大切です。（参考3）自己判断での長期使用は避け、医師の指導のもとで使用するようにしましょう。

便秘薬については次のページで詳しく紹介しています。

「便秘治療に使われる薬 | 服用方法や選ぶ時に注意するべきことを解説」はこちらから

便秘治療に使われる漢方薬

市販薬や処方薬の便秘薬のほか、漢方薬も便秘治療に使われます。代表的な便秘の漢方薬は「大黄甘草湯」や「桂枝加芍薬大黄湯」「麻子仁丸」などです。どれも腸の蠕動運動を促すことで便秘を改善する働きがあり、それぞれ個人の体質や症状に合わせて処方します。（参考6）（参考7）（参考8）

漢方薬で便秘を改善したい方は、次のページもご覧ください。

「漢方薬で便秘治療 | メリットや正しい服用方法、解消方法を解説」の記事はこちらから

便秘の基本情報

便秘とは「本来排泄すべき糞便が大腸内に滞ることによる兎糞状便・硬便、排便回数の減少や、糞便を快適に排泄できないことによる過度な怒責，残便感，直腸肛門の閉塞感、排便困難感を認める状態」と、日本消化管学会「便通異常症診療ガイドライン2023」は定義しています。（参考2）。

排便回数が少なくなることだけが便秘ではありません。毎日排便していてもお腹に苦しさを感じる場合は便秘と診断されたり、逆に数日に1回の排便でも快適に生活できている場合は便秘と診断されなかったりします。

便秘が起こるメカニズム

便秘が起こるメカニズムは次のようなプロセスです。

食べ物は胃で消化された後、小腸で栄養分が吸収されます。小腸で吸収しきれなかった食物残渣は大腸に送られ、ここで水分が吸収される仕組みです。

大腸で水分が吸収されると便が形成され、蠕動運動によって直腸へと運ばれます。そして、直腸に便が溜まると排便反射が起こり、便意を感じます。（参考3）

このプロセスのどこかに問題が生じると便秘になるのです。

便秘の種類

日本臨床内科医会によると、慢性便秘症には様々な分類があり、原因や特徴によって以下の4つのタイプに分類できます。（参考2）　

1．機能性便秘

生活習慣の乱れやストレス、加齢などが主な原因となり、腸の運動機能にトラブルが生じるタイプです。さらに、弛緩性便秘、痙攣性便秘、直腸性便秘などに細かく分類されます。最も一般的で多くの方が経験する便秘です。

2．器質性便秘

大腸がんや腸閉塞、炎症性腸疾患、手術後の癒着など、腸に器質的な異常がある場合に起こる便秘です。女性特有の症状として直腸瘤（直腸壁が膣側に突出する状態）もこのタイプに含まれます。

3．症候性便秘

甲状腺機能低下症や糖尿病、副甲状腺機能亢進症などの全身疾患に伴って発症する便秘です。大腸の蠕動運動が鈍くなることが原因です。基礎疾患の治療を優先して行います。また女性ホルモンの変動による影響も大きく、妊娠中や月経前後に便秘症状が悪化することがあります。

4．薬剤性便秘

抗うつ薬、抗コリン薬などの薬剤が腸の動きを鈍らせることで発生する便秘です。薬の変更や用量調整が必要な場合もあるため、自己判断せず医師に相談することが重要です。

便秘の種類について詳しくは次のページで解説しています。

「便秘の種類 | 便秘になってしまう原因や解消方法も詳しく解説」はこちらから

便秘の時に並行して起こりうる症状

便秘が生じると、以下のような症状も現れることがあります。

• 腹痛・腹部膨満感
• 残便感
• 吐き気・食欲不振
• 頭痛・めまい
• 肌荒れ
• 痔

上記の症状が長期間続く場合や、血便、発熱、吐き気など、通常とは異なる症状がある場合は、腸閉塞やクローン病、大腸がん、直腸潰瘍など重大な疾患の恐れもあります。（参考3）できるだけ早く医師に相談してください。

まとめ

便秘は、ただ苦しい不快な症状が続くだけでなく、様々な健康問題を引き起こす可能性もあります。腸内に便が居座り続けることで腹痛や膨満感などの苦しい症状が現れ、放置しているとさらに悪化するケースが少なくありません。

便秘を改善するためには、生活習慣の基本的な見直しが重要です。それでも症状が改善しない場合は、症状に合わせた便秘薬や漢方薬の使用も検討しましょう。

ただし、便秘が長期間続く場合や、血便、激しい腹痛といった症状がある場合は、他の疾患の可能性もあるため注意してください。

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（参考1） 徳井教孝, 三成由美. 「便秘の定義と便秘体質」. 中村学園大学薬膳科学研究所研究紀要. 2012;（5）:49-54.

（参考2） 日本消化管学会. 「便通異常症診療ガイドライン2023―慢性便秘症」. 南江堂. 2023年7月13日.

（参考3） 日本臨床内科医会「便秘」

（参考4）吉良いずみ「便秘ケアとしての水分摂取のエビデンスに関する統合的文献レビュー」

（参考5）厚生労働省「健康のため水を飲もう講座」

（参考6） 添付文書「ツムラ漢方大黄甘草湯エキス顆粒」

（参考7） 添付文書「桂枝加芍薬大黄湯 （ツムラ桂枝加芍薬大黄湯エキス顆粒（医療用））」（参考8） 添付文書「麻子仁丸 （コタロー麻子仁丸料エキス細粒）」