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便秘による嘔吐 | 考えられる疾患や対処方法、治療方法を詳しく解説

2025.05.29

便秘による嘔吐 | 考えられる疾患や対処方法、治療方法を詳しく解説

長引く便秘に悩まされている時に、吐き気や嘔吐を伴うことがあります。これらの症状は、腸内に溜まった便が胃を圧迫するのが原因であり、予防するためには対処法を知っておくことが大切です。

この記事では、便秘による嘔吐の原因や考えられる疾患、適切な対処法、治療法について紹介します。

便秘で嘔吐することはある?

便秘が続くと、思わぬ形で吐き気や嘔吐につながることがあります。長時間排便できない状態が続くと、腸の中に便が溜まっていき、お腹がどんどん膨らんでいきます。この膨らみが胃を押してしまうため、食事が正常に消化できなくなる場合があります(参考1)

お腹の中がいっぱいになると、食べたものが胃から先に進めなくなり、不快感や吐き気として感じられます。特にお腹が張って苦しい場合には、食べる気がしないだけでなく、吐き気を感じやすくなります。(参考2)便秘が長引くことで腸内の細菌バランスが崩れ、体に良くない物質が増えてしまうことも、気分が悪くなる理由の一つです。(参考3)

また、便秘と吐き気が同時に起きているからといって、必ずしも単純な便秘だけが原因とは限りません。場合によっては何か別の病気が隠れていることもあるため、症状が続く場合は医師に相談することをおすすめします。

便秘による嘔吐で考えられる疾患

便秘と嘔吐が一緒に起きている場合、次のような病気が隠れている恐れがあります。

胃潰瘍・十二指腸潰瘍

消化管の上部、特に胃や十二指腸の内壁に傷ができる病気です。消化液による粘膜の保護機能が低下したり、ヘリコバクター・ピロリという細菌の感染が関わっていたりすることがあります。症状として、胃のむかつき、食欲不振、みぞおちの不快感などがあります。(参考4)

過敏性腸症候群(IBS)

精神面の緊張や日常のストレスが腸の働きに影響を与える病気です。医学的検査では器質的な異常が見つからないにもかかわらず、腸の機能が乱れる状態を指します。便秘傾向のタイプでは、お腹の張りや不快感とともに排便が困難になります。(参考5)

腸閉塞(イレウス)

何らかの理由で腸内の通り道が塞がれ、内容物が進まなくなる状態です。手術後の組織のくっつき(癒着)や、腸のねじれ、腫瘍による圧迫などが原因として挙げられます。典型的な症状には、便やガスが出なくなる、腹痛、嘔吐、お腹の膨らみなどがあります。(参考6)

大腸がん

結腸や直腸に発生する悪性の新生物です。初期段階では症状がほとんど現れないことも多いですが、進行すると腸の通過障害を引き起こし、排便習慣の変化、便の形状変化、血便、腹部不快感などが見られます。(参考7)

このほか、特にウイルス性の胃腸炎(ロタウイルスなど)では嘔吐と下痢が主な症状ですが、症状がよくなる過程で腸内環境が悪化し、水分不足によって便秘を起こすケースが見られます。(参考8)

便秘による嘔吐の対処方法

便秘に伴う嘔吐や吐き気の症状がある場合は、下記の対処法が効果的です。

  • 衣服をゆるめて胸やお腹を楽にする
  • 自分が心地よいと感じる姿勢を取る
  • 吐いた後は体を少し起こし、前かがみになる

便秘があって吐き気も感じる場合は、無理に食事をせず、胃腸を休ませることが大切です。ただし、そのような場合でも子どもや高齢者では、水分不足で脱水状態にならないよう、スポーツドリンクや経口補水液で少しずつ水分を補給しましょう。(参考9)

便秘で吐き気がある場合の治療方法

便秘と吐き気の両方でお悩みの場合、まずは生活習慣の見直しが基本です。症状によっては薬も取り入れましょう。

市販の便秘薬には大きく分けて「酸化マグネシウム」などのお腹の中の水分を調整して便を柔らかくするタイプと「センノシド」などの腸の動きを活発にするタイプの2種類があります。(参考10)ただし、特に腸の動きを活発にするタイプは、医師に相談せず安易に長期間使い続けると、依存状態になって効果が弱まったり、かえって下痢が続いたりする可能性があるため注意が必要です。

症状が強い場合には、浣腸などの処置が必要になることもあります。特に吐き気や嘔吐を伴う便秘が続く場合は、早めに医師に相談しましょう。

便秘を解消する方法

便秘を改善するには、毎日の生活習慣を見直すことが大切です。(参考11) 

水分と食物繊維をしっかり取る

便秘の大きな原因の一つに、水分不足や食物繊維不足があります。(参考9)緑黄色野菜や、バナナなどの果物、海藻類などを接触的に摂取して、こまめに水分を取ることで、お通じが良くなりやすくなります。(参考11) 

体を適度に動かす

軽いウォーキングやストレッチなど、無理のない範囲で体を動かすと、腸の働きも活発になります。運動の習慣がない方も、短い時間から始めて少しずつ続けていきましょう。(参考10) 

規則正しい生活を心がける

朝食後など、毎日同じ時間帯にトイレに行く習慣をつけると、体内のリズムが整い、肛門の刺激も受けて、便秘の改善につながります。(参考11) また、十分な睡眠時間を確保することも大切です。

便秘解消について、より詳しい情報は以下のページをご覧ください。

「便秘の解消方法 | 日々できることや便秘の種類を詳しく解説」はこちらから

便秘の基礎知識

便秘とは「お通じがスムーズにいかず、十分な量の便を気持ちよく出せない状態」のことです。(参考1)

排便が数日間なくても、本人が不快を感じていなければ便秘とは限りません。また、反対に毎日排便があっても、お腹の張りなどの不快な症状がある場合は、便秘と診断されることもあります。

便秘の基礎知識は次のページで詳しく解説しています。

「便秘とは | 症状や原因、治療方法や解消方法を詳しく解説」はこちらから

便秘の主な原因

便秘の主な原因としては、主に以下が挙げられます。(参考6)

  • 水分や食物繊維の摂取が不足している
  • 体を動かす機会が少ない
  • トイレに行きたいと感じても我慢してしまう
  • ストレスが過度にたまっている
  • 十分な睡眠がとれていない

便秘はこのような生活習慣によって起こりやすいため、解消方法を知っておくことが大切です。

便秘のより詳しい原因は下記ページで解説していますので、ぜひご覧ください。

「便秘の原因 | 並行して起こりうる症状や改善方法を詳しく解説」はこちらから

まとめ

便秘が続くと吐き気や嘔吐を感じることがありますが、これは腸に溜まった便がお腹の中で場所を取り、胃を圧迫してしまうことや、腸内環境が変化することが原因です。また、単なる便秘だけでなく、腸閉塞や過敏性腸症候群、大腸がんなどのサインである可能性もあります。

特に注意が必要なのは、強いお腹の痛み、繰り返す嘔吐、便に血が混じる、熱が出るなどの症状です。このような症状がある場合は、早めに医師に相談しましょう。

便秘は「ちょっとした不調」ではなく、体からの大切なメッセージかもしれません。毎日の生活習慣を見直し、適切な対応をとることで、腸の健康を守りましょう。

なお、デジタルクリニックグループでは、オンラインで24時間365日便秘に関する治療相談が可能です。オンライン診療をご希望の場合、下記からご予約ください。

オンライン診療はこちらから

参考文献

(参考1) 尾髙健夫「慢性便秘の定義と分類」日本内科学会雑誌108巻1号

(参考2) 奈良県医師会 向川智英「便秘の悩み」

(参考3) Wei L, Singh R, Ro S, Ghoshal UC. 「Gut microbiota dysbiosis in functional gastrointestinal disorders: Underpinning the symptoms and pathophysiology」. JGH Open. 2021;5(9):976–987.

(参考4) Narayanan M, Reddy KM, Marsicano E. 「Peptic Ulcer Disease and Helicobacter pylori nfection」. Missouri Medicine. 2018;115(3):219–224.
(参考5) 三輪洋人ほか. 「機能性消化管障害の新時代」. 日本消化器病学会雑誌. 2020;117(10):825-833.
(参考6) 板橋道朗. 「イレウスの診断と治療―総論および診断―」. 日本消化器外科学会教育集会. 2010.

(参考7) Duan Bほか. 「Colorectal Cancer: An Overview」. In: Morgado-Diaz JA, editor. Gastrointestinal Cancers [Internet]. Brisbane (AU): Exon Publications; 2022年9月30日. Chapter 1. 
(参考8) 厚生労働省「ロタウイルスに関するQ&A」

(参考9) 吉良いずみ. 「便秘ケアとしての水分摂取のエビデンスに関する統合的文献レビュー」. 日本看護技術学会誌. 2013;12(2):33–41.

(参考10) 三代剛ほか. 「慢性便秘の治療―大腸刺激性下剤の種類とその使い方―」. 日本内科学会雑誌. 2019;108(1):40-45.(参考11) 日本臨床内科医会「便秘」