妊婦が便秘になる原因 | 各ステージ毎の特徴や解消方法を詳しく解説

妊婦はホルモンの影響や体の変化によって便秘になりやすくなります。便秘の原因や症状は妊娠周期ごとに違いがあるため、状態に合わせた適切な対処が必要です。

この記事では、妊婦が便秘になる原因や各ステージ毎の特徴、解消方法などについて詳しく解説します。

妊娠中に便秘になる原因

妊婦が便秘になる主な原因は、体内で「プロゲステロン（黄体ホルモン）」という女性ホルモンの分泌が増加することです。プロゲステロンには妊娠中の子宮を安定させる働きがある反面、腸の運動（ぜん動運動）を抑える作用もあり、便秘を引き起こしやすくします。（参考1）

さらに、妊娠周期が進むにつれて大きくなる子宮が腸を圧迫し、腸の働きが妨げられることもあります。（参考1）また、妊婦は体調の変化により活動量が減る傾向にあることから、運動不足が生じるのも便秘が起こる原因のひとつです。

妊娠初期の便秘の特徴

妊娠初期にはプロゲステロンの影響が現れ始める時期で、腸の動きが鈍くなって便秘を引き起こすことがあります。（参考1）また、つわりによって食事量が減ると腸に便の材料となる食物繊維などが届かなくなり、排便リズムが乱れやすくなります。そのため、便が出づらくなる、何日も出ないといった症状が、突然見られることもあるのです。

妊娠初期の便秘に関して詳しい情報は以下のページでも解説していますので、ぜひご覧ください。

「妊娠初期の便秘 | 原因や妊娠中に使うことができる便秘薬を解説」はこちら

妊娠中期の便秘の特徴

妊娠中期になると、プロゲステロンの分泌量がさらに増えることで腸の動きが鈍くなり、便秘が悪化することがあります。また、お腹が大きくなるにつれて動く機会が減り、運動不足が進行しやすい時期でもあります。排便に必要な腹圧もかけにくくなるため、便秘が慢性化しやすくなるのが特徴です。

妊娠後期の便秘の特徴

妊娠後期では、プロゲステロンの分泌が続いていることに加え、大きくなった子宮が腸を圧迫することで腸が物理的に狭くなり、便の通過が困難になります。圧迫によって腸の位置が妊娠前の状態から変わり、腸の動きがさらに鈍くなって、頑固な便秘になるケースも見られます。（参考1）

妊婦は便秘薬を服用することはできる？

妊婦の便秘は、基本的に赤ちゃんに切迫早産などの直接的な悪影響を与えることはありません。陣痛が生じていなければ、排便時にいきんでも問題ないとされています。（参考2）

しかし、便が硬くなり肛門に詰まると痔になるリスクも高まるため、便秘薬などの早めの対処をすることが大切です。（参考3）また、お腹の張りや痛みなど、妊婦自身の不快感が強い場合も、便秘薬の使用を検討しても良いとされています。（参考2）市販の便秘薬のなかには、子宮に刺激を与える成分が含まれていることもあるため、自己判断での服用は避け、必ず医師の診察を受けてから処方してもらうようにしましょう。（参考4）

妊娠期に使うことができる便秘薬

妊婦でも使用できる便秘薬として「酸化マグネシウム」があります。これは便を柔らかくし、腸の負担を抑えながら自然な排便を促す薬です。医師の指示に従い、決められた用量・用法を守れば、母体にも胎児にも悪影響はほとんどないとされています。（参考4）（参考5）

妊娠中の便秘薬に関しては、以下の記事でも詳しく解説しております。気になる方はぜひご覧ください。

「妊娠中に使用できる便秘薬 | 解消方法や妊娠中の便秘についても解説」はこちらから

妊娠中の便秘を解消する方法

妊婦の便秘を解消するには、日々の生活習慣の見直しが重要です。具体的な方法は以下が挙げられます。（参考3）

• 水分摂取を意識する
• 食物繊維の多い食事を摂取する
• 適度な運動習慣をつける
• 規則正しい生活リズムを送る
• 軽いマッサージをする

まずは、こまめな水分摂取を心がけ、便を柔らかく保ちましょう。加えて、きのこ・大豆・こんにゃく、海藻類などの食物繊維を多く含む食品を積極的に取り入れることも効果的です。（参考3）（参考6）

さらに、ウォーキングなどの軽い運動を継続することで、腸の動きが活発になり排便を促しやすくなります。（参考3）また、毎日決まった時間に食事・就寝・起床を行うことで自律神経が整い、腸の働きも安定します。下腹部の上に両手を乗せて、時計回りに「の」の字を書くように軽くマッサージをするのもおすすめです。

便秘の解消方法については以下の記事でも詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。

「便秘の解消方法 | 日々できることや便秘の種類を詳しく解説」はこちらから

生理前の便秘の特徴

生理前も妊婦と同様、プロゲステロンの分泌が増え、腸の動きが鈍くなることで便秘になりがちです。生理が始まるとプロゲステロンは分泌が減るため、便秘解消につながることもあります。（参考7）（参考8）

生理前は便秘のほかに情緒の不安定や不安感、イライラが生じるのも特徴です。（参考9）生理予定日を過ぎても生理がこず、便秘が続く場合は妊娠の可能性も考えましょう。

生理前の便秘に関しては以下のページでも詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。

生理前の便秘 | 対策方法や便秘治療に使われる薬を詳しく解説はこちらから

まとめ

妊婦の便秘は、主にプロゲステロンの分泌や子宮の成長による腸の圧迫、運動不足などが原因で起こります。妊娠初期・中期・後期で便秘の特徴は異なり、不快感が生じる場合は適した対処法が必要です。

生活習慣の見直しや医師に処方してもらった便秘薬の使用が、妊婦の便秘の安全な改善方法です。無理をせず、適切に対処することで快適な妊娠生活を送りましょう。

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参考文献

（参考1）日本臨床麻酔学会誌 ”妊婦の生理学”

（参考2）公益社団法人 母子衛生研究会 ”妊娠中の気がかり（体重・食事・病気・体調など）”

（参考3）公益社団法人 日本助産師会 ”妊娠中の標準的な健康教育”

（参考4）健栄製薬 “酸化マグネシウムE便秘薬”

（参考5）KEGG ”医療用医薬品：酸化マグネシウム”

（参考6）日本助産学会誌 ”エビデンスに基づく助産ガイドラインー妊娠期・分娩期・産褥期2024ー”

（参考7）公益社団法人 女性の健康とメノポーズ協会 ”エストロゲンとプロゲステロン”

（参考8）日本大腸肛門病会誌 ”IV女性と便秘”

（参考9）公益社団法人 日本産科婦人科学会 ”月経前症候群（premenstrual syndrome : PMS）”