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2025.05.07

便秘のせいで出そうで出ない | 原因や便秘の主な症状、対処法を解説

トイレでいきんでも便が出ない「出そうで出ない」状態は、便が肛門付近まで来ているのに出口で詰まって出ない便秘の症状の一つです。

この記事では、「出そうで出ない」原因や主な症状、便が出そうで出ないときの対処法、そして便秘の治し方を解説します。便秘解消に役立つ生活習慣の改善方法も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

出そうで出ない便秘の原因

「出そうで出ない」状態の便秘は、医学的には直腸に便が溜まっているのに排出できない直腸性便秘に該当することが多いです。なお、慢性便秘症は大きく通過遅延型(大腸の動きが遅くなるタイプ)と排便障害型(直腸からうまく排泄できないタイプ)に分類され、「出そうで出ない」便秘は主に後者の直腸性便秘にあたります(参考1)。

さまざまな要因で便が硬くなったり腸の動きが悪くなったりすると、便が肛門近くまで移動してもスムーズに排便できなくなります。また、便秘の原因は1つではなく、複数の生活習慣や体の状態が関与する場合もあります。主な原因として次のようなものが挙げられます。

  • 食生活の乱れや水分不足
    食物繊維が不足したり、ダイエットで食事量が少ないと便の量が減って硬くなり、排便しづらくなります。また、水分不足も腸内の便を硬くして排便を困難にします(腸内で便の水分が過剰に吸収されるため)。逆に食物繊維をしっかり摂取すると便の量が増えて腸が刺激され、便意を感じやすくなるため、水分はこまめに補給しましょう(参考2)。
  • 運動不足や筋力低下
    身体を動かす機会が少ない生活を続けると、腸の蠕動運動(ぜんどううんどう)が低下して便が腸内に滞留しやすくなります。また、加齢などで腹部の筋肉(腹筋)や骨盤底筋群が弱くなると、いきんでも腹圧がかけにくくなり排便を押し出す力が不足します(参考3)。
  • 排便習慣の乱れ(直腸性便秘)
    本来便意を感じたときには速やかに排泄するのが理想ですが、忙しさや恥ずかしさからトイレを我慢する習慣があると排便反射が次第に鈍くなってしまいます。便意を繰り返し我慢すると、直腸が便でいっぱいになっても感じにくくなり、結果的に便が直腸に留まって「出そうで出ない」状態(残便感)が生じます(参考4)。
  • ストレスや生活リズムの乱れ
    精神的なストレスや睡眠不足、不規則な生活も便秘の原因になります。ストレスによって自律神経の働きが乱れると、腸の動きを抑える交感神経が優位になりぜん動運動の低下を招くリスクがあります(参考5)。
  • 病気や薬の影響
    大腸ポリープや大腸がんなど腸管の病変が便通を妨げている場合や、糖尿病・甲状腺機能低下症など全身の病気が原因で腸の動きが低下するケースもあります。また、痛み止め(特にオピオイド系鎮痛薬)や鉄剤、向精神薬などの薬剤の副作用で便秘が起こるといった報告もあります(参考6)。

出そうで出ない便秘の主な症状

「出そうで出ない」タイプの便秘では、排便が思うようにいかないだけでなく様々な不調が現れます。お腹に張りを感じたり、腹部の膨満感や腹痛が生じたり、ガス(おなら)が溜まって苦しくなることもあります。また、トイレに行って少量の硬いコロコロ便しか出ず、排便後も何か残っている感覚(残便感)がある、といった特徴的な症状がみられます。

この残便感のために何度もトイレに戻りたくなる状態が続くと、日常生活に支障を来すこともあります。

なお、排便回数や頻度には個人差があり、必ずしも「毎日出ない=便秘」とは限りません。健康な人でも週に3回程度の排便は正常範囲とされます。反対に毎日排便があっても排便後に残便感や不快感が強い場合は、同じく便秘症状として治療や対策が必要です。

日本消化管学会が編集した便通異常症診療ガイドラインでも「本来体外に排出すべき糞便が大腸内に滞ることによる兎糞状便・硬便、排便回数の減少や、糞便を快適に排泄できないことによる過度な努責、残便感、直腸肛門の閉塞感、排便困難感を認める状態」を便秘と定義しており、残便感や過度のいきみなど排便困難に関連する症状があれば毎日出ていても便秘に当たるとされています(参考5)。

便が出そうで出ないときの対処方法

便意はあるのに便が出ないとき、少し工夫するだけで排泄を促しやすくなる場合があります。つらい便秘をその場で解消するために、次のような対処法を試してみましょう。

  1. 排便時の姿勢とお腹のマッサージ
    排便時は背筋を伸ばし、軽く前かがみになる姿勢を意識しましょう。上半身を前傾させることで直腸と肛門の角度が開き、便が肛門までまっすぐ降りてきやすくなります。洋式トイレで足が床につかない場合は足元に踏み台を置いて膝を高くすると効果的です。
    また、お腹を時計回りにさする腹部マッサージで腸を刺激すると腸の動きが活発になり便意を促しやすくなります(参考7)。
  2. 市販の浣腸を利用する
    どうしても出ないときは、市販のグリセリン浣腸で直腸を刺激するとスムーズに排便しやすくなります 。ただし乱用は肛門を傷めたり効きにくくなる恐れがあるため注意しましょう(参考8)。
  3. 酸化マグネシウムの便秘薬を服用する
    便を柔らかくする便秘薬を使う方法もあります。特に酸化マグネシウムは腸内に水分を集めて便を軟らかくし、お腹が痛くなりにくい便秘薬です。ただし酸化マグネシウムは、腎機能障害を持つ高齢者の方には投薬・服薬しないよう強く推奨されているので注意が必要です(参考9)。

便秘の治し方

前述の便通異常症診療ガイドラインを参考に、慢性便秘を改善し、日常的にスムーズな排便を促すために重要なポイントを解説します(参考5)。まずは生活習慣の見直しから始めてみましょう。

  • バランスの良い食事を心がける
    普段の食生活を見直し、栄養バランスの良い食事を心がけましょう。特に食物繊維を意識すると、便の量が増えて腸の動きが活発になります。野菜、果物、豆類、穀類、きのこ類などの食品や食材から不溶性食物繊維と水溶性食物繊維をバランスよく摂りましょう。また、ヨーグルトなど善玉菌(腸内細菌)を増やす発酵食品などの食べ物を取り入れるのも腸活として効果的です。
  • 十分な水分補給をする
    硬い便を防ぐため水分を十分に取りましょう。目安は1日約2リットルです。朝起きたときや食事の際に水やお茶を飲む習慣をつけると排便を促しやすくなります。
  • 適度に運動して腸を活発にする
    運動不足の解消も便秘の改善に有効です。軽い体操や散歩などを毎日行い、腹筋を鍛えて腸の動きを促しましょう。
  • 規則正しい生活と排便習慣
    生活リズムを整えることも便秘改善には重要です。十分な睡眠をとり、自律神経を整えましょう。特に朝食後は排便しやすいタイミングなので、毎朝トイレに座る習慣をつけることをおすすめします。また、ストレスをためない工夫も大切です。

便秘の下剤はどのタイミングから飲んでもいい?

基本的には生活習慣の改善を優先しますが、数日排便がない場合は下剤を使用しても構いません。下剤には刺激性と非刺激性の種類があります。刺激の強い刺激性下剤を頻繁に使うと腸が慣れて効きにくくなる習慣性(クセ)が生じる恐れがあるため、注意が必要です。

まずは酸化マグネシウムなど非刺激性の便秘薬を使い、それでも改善しない場合に限り刺激性下剤を使用しましょう。下剤を使用しても改善しない場合や、腹痛・嘔吐などを伴う場合は早めに医師に相談することをおすすめします。

下剤や便秘薬については、以下の記事でも詳しくご紹介しています。
「便秘の下剤はいつ使用すればいい?効果や他の解消方法を詳しく解説」の記事はこちら
「便秘治療に使われる薬 | 服用方法や選ぶ時に注意するべきことを解説」の記事はこちら

まとめ

「出そうで出ない」便秘も、原因に合った対策を行えば解消が期待できます。まずは生活習慣の改善(十分な水分・食物繊維の摂取、適度な運動、規則正しい排便習慣)を心がけましょう。

便秘を放置すると腹痛など体調不良につながる可能性があるため、つらい便秘は早めに対処することが大切です。自分で改善が難しい場合や血便などの症状があるときは、我慢せずに医療機関に相談してください。

なお、デジタルクリニックグループでは、オンラインで24時間365日診療が可能です。
オンライン診療をご希望の場合、下記からご予約ください。

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(参考1) 尾髙 健夫. 「慢性便秘の定義と分類」 日本内科学会雑誌 108(1):10-15. 2019.
(参考2) van der Schoot A, Drysdale C, Whelan K, Dimidi E. “The Effect of Fiber Supplementation on Chronic Constipation in Adults: An Updated Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials.” Am J Clin Nutr. 2022;116(4):953-969.
(参考3) Cui J, Xie F, Yue H, et al. “Physical activity and constipation: A systematic review of cohort studies.” J Glob Health. 2024;14:04197.
(参考4) Burgell RE, Scott SM. 「Rectal Hyposensitivity」 J Neurogastroenterol Motil. 2012;18(4):373-384.
(参考5) 日本消化管学会. 「便通異常症診療ガイドライン2023―慢性便秘症」. 南江堂. 2023年7月13日.
(参考6) 日本うつ病学会. 「日本うつ病学会治療ガイドラインⅡ. うつ病(DSM-5)/ 大うつ病性障害(2024年3月1日改訂)」. 日本うつ病学会. 2024年3月1日.
(参考7) Wang G, Zhang Z, Sun J, et al. “Abdominal massage: A review of clinical and experimental studies from 1990 to 2021.” Complement Ther Med. 2022;70:102861.
(参考8) 日本小児栄養消化器肝臓学会、日本小児消化管機能研究会. 「小児慢性機能性便秘症診療ガイドライン」. 診断と治療社. 2013年11月5日.
(参考9) 日本老年医学会編. 「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン 2015」. メジカルビュー社. 2015年12月20日.