fbpx

2025.04.16

高齢者と高血圧の関係性 | 血圧の正常値や特徴、合併症を詳しく解説

高齢者になるとあらゆる病気にかかりやすくなりますが、高血圧もそのうちの一つです。65歳以上になると、高血圧を発症する割合が高くなるため、定期的に血圧を測定して予防策に努めることが大切です。

この記事では高齢者が高血圧になりやすい理由や、高齢者の血圧の正常値、特徴的な病態などについてお話ししていきます。

高齢者の血圧は上がりやすい?

高齢者は加齢に伴う生理機能の低下により、血圧が上がりやすい傾向にあります。血管の弾力性や、腎臓や内分泌系の機能の低下、自律神経のはたらきの悪化など、多くの要因が複雑に絡み合って高血圧を引き起こしやすくなるのです。

また、さまざまな病気にかかりやすくなるため、二次性高血圧(病気によって発症する高血圧)のリスクも高まります。国民健康・栄養調査(令和元年度)によると、65〜74歳の約66%、75歳以上の約79%が高血圧であると報告されています。

(出典:厚生労働省「令和元年 国民健康・栄養調査報告」

高齢者の血圧の正常値は?

高齢者の高血圧は、75歳未満で130/80mmHg未満(家庭血圧は125/75mmHg未満)、75歳以上で140/90mmHg未満(家庭血圧は135/85mmHg未満)を目標に治療を進めることが一般的です。しかし、個々の目標血圧は脳卒中や糖尿病、心臓病などの合併症の有無、降圧薬の副作用の有無などによって異なってきます。

高齢者の場合、降圧薬によって急激に血圧を下げると体に負担がかかるため、薬物の用量も慎重に調整しなければなりません。医師が個々の状態に合わせて目標血圧を設定し、そのうえで治療を行います。

高齢者高血圧の特徴

高齢者の高血圧で特徴的なのは、血圧が日内や状況によって大きく変動しやすい点です。医療機関で測定した血圧が正常であるのに対し、自宅で測定すると高血圧を示す「仮面高血圧」や、医療機関で測定すると血圧が高くなる「白衣高血圧」も起きやすいため、24時間自由行動下血圧で測定することが望ましいとされています。さらに、高齢者は起立性低血圧や食後の血圧低下が起きやすい特徴もあります。

また、日本の高齢者の高血圧は、食塩の過剰摂取が原因になりやすいのも特徴的です。日本人は食塩摂取量が他の国よりも多いことに加えて、高齢になると食事量が減るのに対し、摂取する食塩の割合も増加する傾向があります。さらに、食習慣の変化によって、肥満やメタボリックシンドロームによる高血圧も増加しています。メタボリックシンドロームが疑われる割合は、65歳以上の男性で約40%に達しているほどです。

これらの特徴を踏まえ、減塩と肥満対策を中心とした生活習慣の改善が、高齢者の高血圧の予防と改善に不可欠です。

出典:日本医師会「超高齢社会におけるかかりつけ医のための適正処方の手引き」

高齢者高血圧の合併症はある?

高齢者の高血圧は、さまざまな合併症を引き起こすリスクを高めます。主なものとして、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血などの脳卒中、狭心症や心筋梗塞などの心臓病、糖尿病、大動脈瘤、閉塞性動脈硬化症、慢性腎臓病などが挙げられます。特に収縮期血圧(上の血圧)で180mmHg、もしくは拡張期血圧(下の血圧)で110mmHgを超える場合は、脳卒中の発症率が極めて高くなることがわかっているため注意しましょう。

これらの合併症は血管の損傷や臓器の機能不全によって発症するものであり、生命を脅かすだけでなく、重篤な後遺症を残す可能性が高いです。特に高齢者の場合、服薬開始後のふらつきによる転倒や骨折にも注意が必要になります。

高血圧に対して適切な治療を受けないと、合併症によって介護が必要な状態になるリスクも高まります。そのため、高齢者の血圧管理は健康寿命を延ばすうえで重要な課題です。

高齢者高血圧の治療方法

高齢者の高血圧の治療は目標とする血圧値を設定したうえで、薬物療法と生活習慣の指導を組み合わせて行われます。目標血圧の設定は、患者の年齢や合併症の有無、全身状態などを総合的に考慮して決定されます。

高齢者が薬治療をする際の注意点

高齢者が薬物治療を受けるときは、以下の点に注意する必要があります。

  • 患者自身で血圧の状態を管理できるか

高齢者の場合、仮面高血圧や白衣高血圧が出やすいため、普段の生活から血圧測定を行うことが重要です。家庭用の血圧計で血圧を測定し、その結果を記録として残せるかどうかが、治療の成功に影響する可能性があります。もし、患者自身での管理が難しい場合は、家族や介護者などの補助が必要となります。

  • 患者自身で処方された内服薬を管理できるか

認知症などがある場合、指定された用量や用法で服薬することが難しい場合があります。また、視力や手指の機能が低下している高齢者の場合、薬の包装を開けることさえ困難なことがあります。そのような場合には、服薬カレンダーや薬ケースなどの補助具を活用したり、薬剤師に用量や用法を調整してもらったりするなどの工夫が必要です。

  • 他の疾患に罹患していないか

高齢者はあらゆる基礎疾患にかかりやすい点も考慮しなければなりません。高齢者は二次性高血圧を発症しやすく、薬剤誘発性高血圧、睡眠時無呼吸症候群、甲状腺機能亢進症、腎血管性高血圧など、さまざまな疾患や治療薬によって高血圧を引き起こす可能性があります。高血圧の原因となる疾患の有無によって使用する降圧薬も異なるため、これらの病気を正確に診断することが重要となります。

高齢者は認知症を含むさまざまな病気にかかりやすいため、身体面や認知面を考慮して降圧薬を検討することが重要です。

日常生活で気を付けるべきこと

高齢者の高血圧治療では、薬物療法と並行して、日常生活を改善させることも重要です。まず、食生活においては、食塩の摂取量を1日6g未満に制限することが推奨されます。野菜を中心としたバランスの取れた食事を心がけ、骨粗鬆症の予防のためにカルシウムを1日700〜800mgほど摂取することも重要です。

次に、運動習慣も高血圧の改善に効果的です。毎日適度な有酸素運動を続けることが推奨されますが、転倒リスクを避けるために、ゆっくりとしたウォーキングなどが適しています。また、筋肉量の低下を防ぐために、筋力トレーニングを取り入れるのも良いでしょう。

必要に応じて、体重の減量や節酒、禁煙なども心がけることが望ましいです。高齢者の場合、極端な生活習慣の変更は生活の質を低下させる可能性があるため、基礎疾患や個性を考慮して、無理のない範囲で調整していきましょう。

まとめ

高齢者は高血圧になりやすく、若者の場合と症状が異なるため、治療場面での目標値も慎重に決めていく必要があります。脳卒中や心臓病、骨折などの合併症も起こりやすく、介護状態に陥るリスクも高くなります。降圧剤を処方してもらうときは、身体面だけでなく、認知面も考慮して、適切な用量と用法で服用できるようにすることが大切です。

また、なかには脚が不自由で医療機関に受診できない方もいるでしょう。そのような場合はオンライン診療をご利用ください。デジタルクリニックのオンライン診療では場所や時間帯を問わず、専門の医師の診察を受けられます。処方した降圧薬についてもご自宅に郵送することが可能ですので、ぜひ一度ご検討ください。

参考文献

厚生労働省「令和元年 国民健康・栄養調査報告」

日本医師会「超高齢社会におけるかかりつけ医のための適正処方の手引き」

非定非常利活動法人日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン 2019(JSH2019)」

非定非常利活動法人日本高血圧学会「高血圧の話」

一般社団法人 日本臨床内科医会「高血圧」

厚生労働省 e-ヘルスネット「高血圧」