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2025.04.11

漢方薬で便秘治療 | メリットや正しい服用方法、解消方法を解説

「便秘に漢方薬を使うのはどうなんだろう…」と考えたことがある方も多いのではないでしょうか。この記事では漢方薬を中心に、便秘の原因から治療薬の種類、生活改善のヒントまでをわかりやすく解説します。正しい知識を身につけて、便秘治療の1つの選択肢に入れてみてください。

便秘治療に使われる漢方薬

便秘治療に使われる漢方薬は、主に以下の3つの作用タイプに分けられます。

  1.  腸管の水分調節によって便を柔らかくする

膠飴(こうい)や芒硝(ぼうしょう/含水硫酸ナトリウム)などの成分が有効で、膠飴は大建中湯(だいけんちゅうとう)に、芒硝は防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)や調胃承気湯(ちょういしょうぎとう)などに含まれています。

  1. 腸管を刺激して腸の動きを促す

大黄(だいおう)や山椒(さんしょう)などの成分が該当し、大黄は大黄甘草湯(だいおうかんぞうとう)、防風通聖散、麻子仁丸(ましにんがん)、潤腸湯(じゅんちょうとう)などに、山椒は大建中湯などに含まれます。

  1. 腸管の過剰な収縮を和らげる

甘草(かんぞう)や芍薬(しゃくやく)があり、大黄甘草湯、防風通聖散、潤腸湯、桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)などに含まれます。(参考1)

また、慢性的な便秘への処方は、体質に応じて以下の2つに大きく分けられます。

  1. 「実証(体力が充実していて抵抗力が高い)」の状態に対して処方される

・大黄甘草湯:便秘の症状だけの場合に用いられる。

・調胃承気湯:大黄甘草湯で効果が不十分なときに使用する。

・桃核承気湯(とうかくじょうきとう):下腹部痛や頭痛があるときに。

・防風通聖散:婦人によく用いられる。

  1. 「虚証(虚弱で体力がない)」の状態に対して処方される

・潤腸湯:高齢者向け。コロコロした便の改善に。

・麻子仁丸:便秘のみの症状や、便が硬くなりやすい高齢者に。

・桂枝加芍薬大黄湯(けいしかしゃくやくだいおうとう):お腹の張りや腹痛があるときに。

・大建中湯:腹部膨満感や冷えがある場合に用いられる。(参考1)

漢方薬のメリット

便秘治療における漢方薬の主なメリットは以下の通りです。

  • 作用点が多く、全体のバランスを整えやすい
  • 効果の強弱を調整しやすく、体質に合わせやすい
  • 便秘だけでなく、腹部膨満感や腹痛などの関連症状にも対応できる
  • 副作用が少なく、穏やかに効く

残便感など便秘に伴う不快な症状や悩みも改善できるため、患者さんの満足度が高まりやすい点も特徴です。(参考1)(参考2)

漢方薬の正しい服用方法

漢方薬は、次のような場合に使用されることが多いです。

  • 腹部膨満感や腹痛など、便秘関連症状がある場合
  • 高齢者で、穏やかな作用を求める場合
  • 他の疾患がある場合
  • 西洋薬で十分な効果が得られない場合(参考1)

使用時の注意点としては以下のようなことが挙げられます。

  • 大黄のような刺激性成分を含む漢方薬は、連用を避ける
  • 大黄は妊婦や妊娠の可能性がある人には使用しない(参考2)
  • 複数の漢方薬を同時に使うと副作用のリスクが高まるため、避ける(参考1)

また、多くの漢方薬に含まれる甘草は、偽アルドステロン症を引き起こす可能性があるため、長期使用や併用時には特に注意が必要です。(参考1)

漢方薬以外の便秘薬の種類

漢方薬以外にも、以下のようにさまざまな作用を持った薬があります。

  • 浸透圧系下剤
    腸内の水分分泌を促し、便を柔らかくして排便回数を増やします。
  • 刺激系下剤
    大腸を刺激してぜん動運動を活発にし、排便を促します。
  • 上皮機能変容薬
    小腸で水分分泌を促進し、便を柔らかくすることで腸内の便の移動を助けます。
  • 胆汁酸トランスポーター阻害薬
    大腸に届く胆汁酸の量を増やし、水分分泌と消化管の運動を促して排便を助けます。
  • 腸内環境改善薬(整腸剤)
    腸内細菌のバランスを整え、便秘や腹部膨満感などの症状を改善します。(参考3)(参考4)

便秘の治療薬についてさらに詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。

「便秘治療に使われる薬 | 服用方法や選ぶ時に注意するべきことを解説」の記事はこちらから

便秘の基礎知識

便秘とは、排便の回数や量が不足している状態を指します。個人差はありますが、一般的には3日以上排便がない、または週に3回以下の場合に便秘とされます。(参考5)

便秘は主に以下の4つに分類され、それぞれ原因や治療法が異なります。

  • 機能性便秘:生活習慣やストレス、加齢などが影響
  • 器質性便秘:腸の病気や構造的な問題が原因
  • 症候性便秘:全身の病気の一症状として発症
  • 薬剤性便秘:薬の副作用によって起こる(参考5)

便秘について詳しくはこちらの記事をご覧ください。

「便秘とは」内部リンク

便秘になる原因

便秘の原因はタイプによって異なりますが、主に以下のような生活習慣が影響しています。

  • 運動不足
  • 食物繊維不足
  • 腹筋の不足
  • ストレス
  • 加齢
  • 過度なダイエット(参考6)

詳細な便秘の原因については、こちらの記事もご参考ください。

「便秘の原因 | 並行して起こりうる症状や改善方法を詳しく解説」の記事はこちらから

便秘の解消方法

便秘改善には、以下のような生活習慣の見直しが効果的です。

  • 規則正しい食生活
  • 食物繊維を多く含む食事
  • 十分な水分補給
  • 適度な運動
  • お腹のマッサージ
  • ウォシュレットの活用

これらを試しても改善が見られない場合や、症状が強く早めの対処が必要な場合は薬の使用も検討されます。(参考6)(参考7)

便秘の解消法についてより詳細を知りたい方はこちらもご覧ください。

「便秘の解消方法 | 日々できることや便秘の種類を詳しく解説」の記事はこちらから

まとめ

便秘治療に使える漢方薬は、体質や症状に合わせて様々な選択肢があり、関連する不調にも対応できる点や、副作用が少ない点が大きなメリットです。一方で、使用には禁忌や注意点には注意しましょう。生活習慣の見直しと合わせて、自分に合った方法で便秘を改善していきましょう。

(参考1)眞部紀明 et al.(2019)「慢性便秘の治療ー漢方薬の種類とその使い方ー」日内会誌

(参考2)眞部紀明 et al.(2023)「『だす(排泄)』を補完する漢方薬」薬局

(参考3)浦田美菜子(2024)「整腸薬」消化器ナーシング

(参考4)浦田美菜子(2024)「緩下剤」消化器ナーシング

(参考5)一般社団法人日本臨床内科医会「便秘」

(参考6)全国健康保険協会「便秘」

(参考7)結束貴巨(2023)「高齢者の便秘と課題」日WOCM回誌