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2025.04.09

肥満と高血圧の関係性 | 起こるメカニズムや治療方法を詳しく解説

肥満症において、特に引き起こしやすい疾患が高血圧です。高血圧は心血管病の主要なリスク因子であるため、治療・管理は極めて重要です。

今回の記事では、肥満と高血圧の関連性や、減量すれば血圧は下がるのかどうか、肥満における高血圧の治療法などを詳しく解説していきます。

肥満になると高血圧になる?

肥満は高血圧の発症につながる要因の一つです(参考1、2)。肥満の方は、そうでない方と比較して高血圧の割合が2~3倍多く、若年期からの肥満傾向が将来的な高血圧の発症に影響を及ぼすことがわかっています(参考1)。

なお、同程度のBMIでも内臓脂肪が多い者では血圧が高いとする報告があります(参考3)。

肥満による高血圧が起こるメカニズム

肥満が高血圧に繋がるメカニズムは、以下の要因が考えられます(参考1、3)。

  • ナトリウムと水分の過剰摂取

過食などで塩分の摂取量が多くなると、体内のナトリウムが過剰になりやすくなります。すると、ナトリウム濃度を薄めるために水分が増加し、血液の量が増加します。その結果、血管にかかる圧力が高まり、高血圧が発生しやすくなります。

  • 高インスリン血症

肥満になると、インスリンというホルモンが過剰に分泌されやすくなり、その働きによって、排泄されるはずのナトリウムが再吸収されやすくなり、血液中のナトリウム濃度が上昇します。これにより、血液量が増えて血圧が上がります。

さらに、インスリンは交感神経系を刺激し、カテコールアミンというホルモンを分泌させます。カテコールアミンは血管を収縮させる働きがあり、これも血圧を上昇させる原因となります。

  • 脂肪細胞からのアンギオテンシノーゲン分泌 

脂肪細胞は、アンギオテンシノーゲンという物質を分泌します。この物質は、血圧を上昇させる働きがあります。内臓脂肪が多い人はアンギオテンシノーゲンの分泌が増え、血圧が上がりやすくなります。

減量すれば血圧は下がる?

体重が減ると、血管にかかる負担が減り、血圧が安定しやすくなります。具体的には、肥満を伴う高血圧症の場合、食事療法や運動療法による3%以上の減量で降圧効果が期待できるとされています(参考1)。

肥満による別の病気の発症も

肥満は、脂質異常症や2型糖尿病、睡眠時無呼吸症候群などを引き起こす可能性があります(参考1)。また、BMI が上がることで、心房細動、心不全、心臓突然死のリスクが約1.2~1.4倍上昇することがわかっています(参考1)。

肥満による高血圧の治療方法

肥満による高血圧の治療方法は、以下のような治療が重要となります(参考1)。

  • 減量と適正体重の維持

肥満症を伴う高血圧の場合、特に生活習慣の修正が重要です。食事療法や運動療法による減量と適正体重の維持を行うことで、高血圧の改善だけでなく、降圧薬の必要量を減らしたり、代謝や炎症反応、血管機能の改善も期待できます。

  • 薬物療法

高血圧の治療には、ARB(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬)、ACE(アンジオテンシン変換酵素)阻害薬、Ca拮抗薬、サイアザイド系利尿薬が第一選択薬として推奨されています。

特に、糖代謝異常がある場合はARBやACE阻害薬が推奨されます。それでも十分な降圧が得られない場合は、長時間作用型 Ca拮抗薬またはサイアザイド系利尿薬(常用量の半量)の併用が考慮されます。配合剤が使用可能な場合は、配合剤の使用が推奨されます。

「高血圧 薬」内部リンク

肥満による高血圧の予防方法

高血圧の予防には減量が推奨されます(参考1)。具体的には、4〜5kgの減量を行うことで、血圧の低下が期待できることがわかっています(参考5)。

また、減塩をすることでも血圧の低下が期待できます(参考6)。

日本高血圧学会のガイドラインでは1日6g未満、厚生労働省による「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では一般人の食塩摂取の目標量が男性7.5g未満/日、女性6.5 g未満/日と設定されており、これらを目標にして減塩を意識することで、高血圧の予防や改善に効果が期待できます(参考7、8、9)。

「高血圧 予防」内部リンク

まとめ

肥満は高血圧の主要な要因の一つであり、治療のためには生活習慣を改善することが重要です。特に減量は血圧の低下に効果が期待できます。肥満は高血圧だけでなく、さまざまな健康リスクを高めるため、早期の予防と適切な治療が求められます。

参考文献

参考1)肥満症診療ガイドライン2022

(参考2)高血圧治療ガイドライン2019

参考3)Abdominal visceral and subcutaneous adipose tissue compartments: association with metabolic risk factors in the Framingham Heart StudyCaroline S Fox et al. Circulation. 2007.

参考4)Obesity-induced hypertension: interaction of neurohumoral and renal mechanisms

John E Hall et al. Circ Res. 2015.

参考5)Influence of weight reduction on blood pressure: a meta-analysis of randomized controlled trials

Judith E Neter et al. Hypertension. 2003 Nov.

(参考6)Graudal, N.A., Hubeck-Graudal, T., Jurgens, G.: Effects of low sodium diet versus high sodium diet on blood pressure, renin, aldosterone, catecholamines, cholesterol, and triglyceride, Cochrane Database of Systematic Reviews, doi:10.1002/14651858.CD004022.pub4(2017)

(参考7)日本人はどこまで食塩を減らせるか? 土橋 卓也 製鉄記念八幡病院

(参考8)日本高血圧学会

(参考9)健康日本21アクション支援システム