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2025.04.05

高血圧性心不全 | 原因や症状、検査方法や治療方法を詳しく解説

現在、20歳以上の国民の約半数が高血圧を抱えています。高血圧は心疾患の主要なリスク要因の一つであり、血圧を下げることで心血管疾患による死亡率が低下すると報告されています。本記事では、高血圧が原因で起こる高血圧性心不全について解説し、予防や早期発見の参考になればと思います。(参考1)(参考2)

高血圧性心不全はどんな病気?

高血圧性心不全とは、高血圧が原因で心臓のポンプ機能が低下し、体内に必要な血液を十分に送り出せなくなる状態です。(参考3)心不全は命に関わる場合もあり、非常に深刻な疾患です。

高血圧性心不全は2つのタイプに分類されます。

  • 拡張機能障害
  • 収縮機能障害

拡張機能障害は、心臓が全身から戻ってきた血液を十分に取り込めなくなる状態です。収縮機能障害は、心臓が血液を全身に送り出す機能が低下する状態です。(参考4)

初期段階では拡張機能に障害が生じ、進行すると収縮機能障害も現れます。(参考5)高血圧性心不全でよくみられる拡張機能障害のみの心不全は回復が難しくなることがあります。(参考6)

高血圧が心不全の原因になるのはなぜ?

高血圧が心不全を引き起こす主な原因は、血圧の上昇により心臓に過剰な負荷がかかるためです。この負荷が続くことで、心臓の壁が厚くなり、心筋が傷つくことになります。その結果、心臓の機能が低下します。

心臓が血液を送り出す際、送り先の血管の圧力が高ければ高いほど、心臓はその血液を送り出すために余分な力を使わなければなりません。この負担が続くと、心臓の壁が肥厚し、血液を受け入れる際に心臓が十分に拡張できなくなります。これが進行すると、体内の血液の循環がうまくいかず、心臓自身にも血液が十分に供給されなくなります。

さらに悪化すると、心臓の筋肉が損傷し、収縮機能が低下して、ポンプとしての役割を果たせなくなります。また、血圧を上昇させるホルモンであるレニン・アンジオテンシン系(RA系)が活性化され、これがさらなる心機能の低下を招き、病状を悪化させます。(参考3)(参考4)(参考5)

高血圧性心不全の症状

高血圧性心不全の症状には、主に以下のようなものがあります。

  • 咳、息苦しさ
  • 呼吸困難
  • 浮腫(むくみ)
  • 体重増加
  • 食欲不振
  • 疲れやすさ

息切れは坂道や階段で特に感じられやすいですが、加齢によるものと誤解され見落とされがちです。病気が進行すると、呼吸困難が現れることもあります。(参考3)(参考7)

高血圧性心不全の検査方法

高血圧性心不全の診断には、主に以下の4つの検査方法が用いられます。

  • 症状
  • 心電図、胸部レントゲン
  • 心エコー
  • 脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)

心電図では、高血圧性心不全に特有の異常は確認できません。そのため、他の病気との違いを確認するために使用されます。胸部レントゲンでは、心臓の拡大や肺に水分が溜まっていないかを確認します。心エコーは、心臓の形状を観察することで、初期段階の拡張機能障害を発見する重要な検査です。BNPは採血によって測定できる心臓の筋肉から分泌されるホルモンで、心臓に負担がかかっていることを示す指標となります。(参考8)

高血圧性心不全の治療方法

高血圧性心不全の治療方法は、薬物療法が中心で、急性期と慢性期に分けられます。

急性期では、心臓の負担を減らし、血液の循環を改善するために血管拡張薬が使われます。例えば、心臓への血液の戻りを減らして負担を軽減する硝酸薬や、複数の作用で心臓を保護するカルペリチドが使用されます。

慢性期では、心臓を保護しながら血圧をコントロールし、RA系(レニン・アンジオテンシン系)の過剰な活性化を抑えることが重要です。具体的には、心不全の発症を抑え進行を防ぐACE阻害薬や、心不全の悪化を防ぐARBが使用されます。また、厳格な血圧管理には、確実に血圧を下げることができる長時間作用型カルシウム拮抗薬が使われます。収縮機能障害がある場合には、心臓の機能を改善するβ遮断薬や、体内の余分な水分を排出する利尿薬も処方されます。(参考9)(参考10)

高血圧の改善方法

高血圧には、以下のような生活の改善が効果的です。

  • 塩分制限
  • カリウム摂取
  • 体重減少および肥満改善
  • 運動
  • アルコール制限
  • ストレス軽減
  • 十分な睡眠
  • 禁煙

生活習慣の改善で血圧管理が難しい場合は、降圧薬による治療を行います。(参考11)(参考12)

高血圧の改善方法は、こちらの記事でも詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。

「高血圧 改善」内部リンク

高血圧のその他の合併症

高血圧の合併症は、主に心臓や血管、腎臓の疾患が挙げられます。

その他にも、以下のような合併症が発生する可能性があります。

  • 脳:脳出血、脳梗塞、くも膜下出血
  • 眼:眼底出血、網膜静脈閉塞症
  • 心臓:心不全、心肥大、狭心症、心筋梗塞
  • 大動脈:大動脈瘤、大動脈解離
  • 腎臓:慢性腎臓病、腎不全

長期間の高血圧により血管が硬くなり、脆弱になることで、これらの合併症が全身に引き起こされるリスクが高まります。(参考12)

高血圧による病気は、こちらの記事で詳細に解説していますので、ぜひ参考にしてください。

「高血圧 病気」内部リンク

まとめ

高血圧性心不全は、高血圧によって心臓のポンプ機能が低下し、血液を効率的に送り出せなくなる疾患です。発見や治療が遅れると回復が難しい場合もあるので、早期の発見と治療が重要です。健康的な生活を送ることにより適切な血圧を維持し、心血管系疾患のリスクを予防しましょう。

(参考1)厚生労働省e-ヘルスネット「高血圧」

(参考2)柳川洋(2014)「高血圧の疫学」月刊地域医学

(参考3)公益財団法人循環器病研究振興財団「新しい循環器病治療薬ー心不全・高血圧・糖尿病の薬を中心にー」

(参考4)公益財団法人日本心臓財団「高齢者に多い『収縮機能が保たれた心不全』」

(参考5)中谷敏(2010)「高血圧性心不全の臨床医学②診断学」, 血圧

(参考6)絹川真太郎, 筒井裕之(2010)「高血圧性心不全の臨床医学①疫学」, 血圧

(参考7)公益財団法人日本心臓財団「心不全の初期サインー早期発見のためにー」

(参考8)公益財団法人日本心臓財団「心不全の診断と検査」

(参考9)朝倉正紀, 北風政史(2010)「高血圧性心不全の臨床医学③治療学」, 血圧

(参考10)公益財団法人日本心臓財団「硝酸薬・血管拡張薬」

(参考11)国立研究開発法人国立循環器病研究センター「高血圧」

(参考12)一般財団法人滋賀保健研究センター「高血圧症」