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2025.02.25
女性の方に特に多い泌尿器疾患の1つに『膀胱炎』があります。一般的には『膀胱炎』というと急性(単純性)膀胱炎のことをさし、体の下腹部にある膀胱に炎症が起きている状態をいいます。膀胱炎は、細菌が尿道から膀胱に入り込むことにより膀胱内に入った細菌が繁殖し膀胱に炎症が起こります。膀胱の炎症により、排尿時痛や頻尿、残尿感などの症状が現れます。女性は男性の方より尿道が短いため、特に膀胱炎になりやすいのです。ここでは、膀胱炎の治療に使用される漢方薬について詳しく説明します。
目次
膀胱炎の最も一般的な原因は、細菌、特に大腸菌による感染です。膀胱炎の治療には、抗生物質が中心となりますが、漢方薬の併用も有効な治療です。漢方医学の考え方の中に「気」「血」「水」があります。l 気:体内を流れるエネルギーとされ人間が生命活動を営むための生理機能であり 生命の根源とされています。l 血:気の作用により血脈中を絶えず循環している赤い有形の物質(西洋医学でいう血液を含む栄養物質)とされています。l 水:血液を除く体内すべての生理的な水液の総称(涙液、消化液、唾液、汗、尿、関節液など)とされています。
膀胱炎に使われる漢方薬は「気(き)」「血(けつ)」「水(すい)」をめぐらせる生薬と、体を温める生薬の組み合わせで、血の巡りを良くし、水分の代謝を改善することで、膀胱炎の症状緩和につながります。(参考1)それでは、膀胱炎によく使用される漢方薬について説明していきます。
猪苓湯自体には細菌をやっつける効果まではありませんが、膀胱の粘膜の状態を整えて止血効果のある阿膠(アキョウ)という生薬の効果で血尿などの症状が出ている場合に膀胱炎の治療をサポートする場合があります。猪苓湯は、主薬の猪苓(チョレイ)をはじめ、5種類の生薬が配合されています。・猪苓(チョレイ)、茯苓(ブクリョウ):利尿作用(水分循環を改善し尿の出をよくする)があります。・沢瀉(タクシャ):利尿作用・軽度の抗菌・消炎作用(熱や炎症をしずめる働きをする)があります。・阿膠(アキョウ):止血作用と血液を増やす効果があります。・滑石(カッセキ):軽度の抗菌・消炎作用があります。(参考2)
五淋散の名前の由来は五種類の症状(五淋)を治すところからきています。五淋とは、石淋(尿路結石)・気淋(前立腺肥大、神経性頻尿)・膏淋(尿がクリーム、米のとぎ汁状になるもの)・労淋(過労からくる排尿異常)・熱淋(急性の尿路感染症)のことです。五淋散は様々な尿のトラブルに対処することができます。五淋散は6種の生薬が配合されています。・山梔子(サンシシ)、黄芩(オウゴン):消炎・解熱・鎮静作用を持ち、黄芩はさらに利尿作用があります。・芍薬(シャクヤク)、甘草(カンゾウ)、当帰(トウキ):鎮痙・鎮痛効果によって排尿痛を緩和させます。・地黄(ジオウ):清熱涼血に働き、止血の効果があります。
(参考3)
竜胆瀉肝湯は体の熱をとり、水を循環させる効果と体力を充実させる効果があります。特に熱感や痛みなどの炎症をとる効果が強いです。竜胆瀉肝湯は10種の生薬が配合されています。・当帰(トウキ)、地黄(ジオウ):体力を充実させ、身体のバランスを整えます。・黄芩(オウゴン)、山梔子(サンシシ):炎症を鎮める効果があります。・沢瀉(タクシャ)、木通(モクツウ)、車前子(シャゼンシ):利尿作用があります。・竜胆(リュウタン)、甘草(カンゾウ):消化吸収を助け、エネルギーに変えます。炎症を鎮める効果があります。(参考4)
八味地黄丸は新陳代謝機能を高める作用があるので、中年以降の方が使用する治療薬として効果がある医薬品です。八味地黄丸は、8種類の生薬が配合されています。・附子(ぶし)、桂皮(けいひ):循環を促進して体を温めます。・山薬(さんやく)、山茱萸(さんしゅゆ)、熟地黄(じゅくじおう):体の抵抗力を高めます。・牡丹皮(ぼたんぴ)、沢瀉(たくしゃ)、茯苓(ぶくりょう):利尿作用と自律神経を鎮めます。これらの生薬は、体を温める作用があり体全体の機能低下を改善する効果がある医薬品です。(参考5)
「膀胱炎になりやすい季節はあるの?』「もし膀胱炎になった場合はどのように治療するの?」ここではそんな疑問や治療方法、膀胱炎にならないための対策を詳しく説明します。
夏の時期は脱水になりやすく、排尿量が減り膀胱にたまった細菌が流されないため、膀胱炎を発症する可能性が高くなります。また、冷房で体が冷えると免疫力が低下するため、膀胱炎になりやすいです。(参考6)
膀胱炎の多くは細菌感染が原因で発症するため、病院での治療は抗生剤の使用が基本になります。抗生剤の効果として、細菌の細胞壁を壊すことで、原因菌を直接攻撃するので、症状を素早く改善することができますが、一方で抗生剤には問題点もあります。・抗生剤の効果は一時的なものです。特に女性は膀胱炎を繰り返す場合が多いので、一度改善しても発症するたびに抗生剤を服用しなければなりません。・体質よっては抗生剤副作用で下痢を起こす場合があります。・正しく使用しないと薬の効かない菌(耐性菌)が生まれる可能性があります。(参考7)漢方薬は膀胱炎を発症しているとき症状の緩和をしながら、「気」「血」「水」が整うことにより、膀胱炎を発症しにくい体質改善も期待できます。
膀胱炎になる原因は、尿量の減少によって膀胱内や尿道の細菌を排出できないことと、抵抗力の低下で細菌感染しやすくなるという2点が大きいと言えます。そのため、これらに対する養生を心がけることが膀胱炎の予防に繋がります。l 水分をしっかりとる:体内の水分量をしっかりと維持することで尿量が増え、膀胱内や尿道内の細菌の排出を促します。l 身体を冷やさない:特に下腹部を冷やさないことで免疫力を維持し、細菌に対する抵抗力が落ちないようにします。(参考8)
膀胱炎に対する漢方薬のアプローチは、単に症状を抑えるだけでなく、体質の改善を目指し、全身のバランスを整えることに重点を置きます。膀胱炎は抗生剤が主な治療法ですが、漢方薬を併用することで症状の軽減や再発防止に役立つ場合があります。漢方薬は個々の体質に合ったものを選び、医師や専門家の指導のもとで使用することが大切です。
【参考文献】「Kampoful Life byクラシエの漢方」Kuracie「ツムラ漢方猪苓湯エキス顆粒A」ツムラ漢方処方解説 五淋散」小太郎漢方製薬株式会社「竜胆瀉肝湯」日経DI 2013年7月号「八味地黄丸」漢方ナビ兼松稔(岐阜大学医学部泌尿器科学教室)他「女子急性単純性膀胱炎の臨床研究」第39回日本泌尿器学会中部総会シンポジウム荒川創一(神戸大学医学研究科地域社会学・健康科学講座) 「尿路性器感染症の診断・治療・予防-単純性尿路感染症、急性性器感染症を中心に―」「膀胱炎」みんなの家庭の医学
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