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2025.04.22

便秘で吐き気がする | 理由や考えられる疾患、治療方法を詳しく解説

便秘中に吐き気を感じ、便秘と吐き気の関係について疑問に思う方もいるのではないでしょうか。

便秘は単に排便が滞るだけでなく、お腹の張りや腹痛などの症状を伴い、ときには吐き気や嘔吐といった不快感につながることもあります。本記事では、便秘で吐き気が起きる理由や考えられる病気、治療法や解消方法、基礎知識、さらに注意すべき危険な症状について詳しく解説します。

便秘の時に吐き気が起きる理由

便秘になると大腸に便やガスが蓄積し、腸内の圧力が高まって胃が圧迫されます。その結果、消化中の食べ物が先に進まなくなり、消化不良を起こして吐き気の原因になります(参考1)。

特にお腹がひどく張って腹部膨満感が強い場合は、食欲不振だけでなく吐き気の原因にもなっている可能性が研究により示されています(参考1)。また、便秘によって腸内環境が乱れ、有害物質を発生させる悪玉菌が増えることも吐き気や嘔吐の一因となります(参考2)。

便秘と吐き気があるときに考えられる疾患

便秘に加えて吐き気の症状がある場合、何らかの疾患が関係している可能性があります。代表的な病気として次のようなものが挙げられます。

  • 胃潰瘍・十二指腸潰瘍
    胃や十二指腸の粘膜に生じる潰瘍(皮膚や粘膜がただれる疾患)です。ピロリ菌感染などが原因で、吐き気や腹痛、胸やけ、下血、貧血などの症状が現れます。(参考3)
  • 過敏性腸症候群(IBS)
    ストレスなどで自律神経のバランスが乱れ、腸の動きに異常が起こる機能性消化管疾患です。便秘型IBSでは便秘と腹痛が起こり、吐き気や腹部膨満感を伴うこともあります(参考4)。
  • 腸閉塞(イレウス)
    腸管が詰まって内容物が肛門まで運べなくなる状態です。術後の腸の癒着やヘルニア、大腸がんなどが原因となります。数日間排便・排ガスがなく、お腹の激しい痛み、吐き気・嘔吐、腹部の膨満、発熱などを伴う場合、早急な治療が必要となる可能性があります(参考5)。
  • 大腸がん
    大腸(結腸・直腸)の悪性腫瘍です。腸管が狭くなるため便秘と下痢を繰り返し、便が細くなる、血便や腹痛、貧血、吐き気症状が現れます。便秘とこれらの症状が続く場合は検査・診療を受けましょう(参考6)。

便秘の治療方法

便秘症の治療はまず生活習慣の改善が基本ですが、症状や原因に応じて薬物療法も行います。

市販の便秘薬(下剤)には、便を柔らかくする塩類下剤(酸化マグネシウムなど)や腸を刺激してぜん動運動を促す刺激性下剤(センナなど)など様々な種類があり、症状に応じて医師と相談し適切な薬を使用します(参考7)。

ただし下剤を自己判断で頻用すると、効果が低下したり、依存症などの副作用(リスク)が起こる可能性があるため、基本的にはおすすめしません。

症状が重い場合は浣腸や医療機関での処置(摘便)が必要になることもあります。特に吐き気や嘔吐を伴う場合は早めに医療機関を受診してください。

便秘の解消方法

便秘を解消するには日常の生活習慣を整えることが大切です。以下に便秘解消のための一般的な方法を示します。

  • 十分な水分と食物繊維の摂取(参考8)
    水分不足や食物繊維不足は便秘の大きな要因の一つと言われています。野菜や果物、穀類や豆類などから食物繊維をしっかり補い、こまめに水分をとることで便通が改善しやすくなります。ヨーグルトや発酵食品を取り入れて腸内環境の改善に努めることも有効です。
  • 適度な運動
    軽い散歩やストレッチなど無理のない程度に体を動かすと腸の動きが活発になり、排便を促します。運動習慣のない人も短時間の運動から始め、継続しましょう。
  • 規則正しい排便習慣
    朝食や水で腸を刺激し、便意を感じたら我慢せずすぐトイレに行きましょう。毎日同じ時間に排便の時間を設け、リズムを整えることが大切です。

これらの取り組みは腸内環境を整える「腸活」にもつながります。生活習慣を見直しても改善しない慢性的な便秘は、早めに医療機関に相談しましょう。

便秘の解消方法については、以下の記事でも詳しくご紹介しています。

「便秘の解消方法 | 日々できることや便秘の種類を詳しく解説」の記事はこちら

便秘の基礎知識

便秘とは「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」と定義され、原因によって腸の病気が原因の器質性便秘生活習慣やストレスが原因の機能性便秘(慢性便秘症)に分けられます。

器質性便秘には大腸がんなどの消化器の疾患が含まれ、機能性便秘は水分・食物繊維不足や運動不足、便意の我慢、ストレス、睡眠不足、薬の副作用など様々な要因が重なって起こります。

慢性的な便秘では腹痛や膨満感だけでなく吐き気や食欲不振など全身の症状を伴い、生活の質(QOL)が低下することも報告されています(参考9)。

便秘の危険な症状

次のような症状が見られる場合は、別の病気の危険を知らせるサインです。自己判断せず早めに医師に相談することをおすすめします。

  • 激しい腹痛や嘔吐・発熱
    腸閉塞や炎症性腸疾患の急性発作、消化管の穿孔などの可能性があります(参考10)。
  • 便に血が混じる
    鮮血や黒色便(タール便)が続く場合は、大腸がんや消化性潰瘍などの可能性があります(参考11)。
  • 貧血
    めまいや皮膚の蒼白を伴う貧血症状がある場合、消化管出血など重篤な病気が疑われます(参考12)。

まとめ

便秘で吐き気がする場合、腸に溜まった便やガスによる胃の圧迫や腸内環境の悪化などが原因と考えられます。また、胃潰瘍や過敏性腸症候群、大腸がんなどの病気が隠れている可能性もあります。

吐き気を伴う便秘では、生活習慣の改善と適切な治療によって改善に努めましょう。特に激しい腹痛や嘔吐を伴う場合は重篤なサインの可能性があるため、早めに医療機関を受診することが大切です。便秘は軽視せず、適切な対処で腸の健康を守ることが身体全体の健康を維持することにもつながるでしょう。

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(参考1) Barber Caselles C, Aguilar Cayuelas A, Yáñez F, Alcala-Gonzalez LG. 「Abdominal distension and bloating: Mechanistic approach for tailored management」. Gastroenterología y Hepatología. 2024;47(5):517-521.
(参考2) Wei L, Singh R, Ro S, Ghoshal UC. 「Gut microbiota dysbiosis in functional gastrointestinal disorders: Underpinning the symptoms and pathophysiology」. JGH Open. 2021;5(9):976–987.
(参考3) Narayanan M, Reddy KM, Marsicano E. 「Peptic Ulcer Disease and Helicobacter pylori Infection」. Missouri Medicine. 2018;115(3):219–224.
(参考4) 三輪洋人ほか. 「機能性消化管障害の新時代」. 日本消化器病学会雑誌. 2020;117(10):825-833.
(参考5) 板橋道朗. 「イレウスの診断と治療―総論および診断―」. 日本消化器外科学会教育集会. 2010.
(参考6) Duan Bほか. 「Colorectal Cancer: An Overview」. In: Morgado-Diaz JA, editor. Gastrointestinal Cancers [Internet]. Brisbane (AU): Exon Publications; 2022年9月30日. Chapter 1. 
(参考7) 三代剛ほか. 「慢性便秘の治療―大腸刺激性下剤の種類とその使い方―」. 日本内科学会雑誌. 2019;108(1):40-45.
(参考8) 吉良いずみ. 「便秘ケアとしての水分摂取のエビデンスに関する統合的文献レビュー」. 日本看護技術学会誌. 2013;12(2):33–41.
(参考9) 中島淳ほか. 「慢性便秘の診断と治療の進歩」. 日本内科学会雑誌. 2019;108(1):10-17.
(参考10) 日本消化器病学会. 「Evidence‑based Clinical Practice Guidelines for Inflammatory Bowel Disease(IBD)2020(改訂第2版)」。一般財団法人日本消化器病学会. 2020年11月15日.
(参考11) 千葉 勉、溝上 裕士、伊藤 俊之 ほか. 「重篤副作用疾患別対応マニュアル―消化性潰瘍(胃潰瘍、十二指腸潰瘍、急性胃粘膜病変、NSAIDs潰瘍)」 厚生労働省. 2007.
(参考12) Gerber GF. 「鉄欠乏性貧血」 MSDマニュアル プロフェッショナル版. 2023.