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2025.04.22

多汗症のチェック方法 | 部位別のチェック方法や治療方法を解説

多汗症とは、体温調節に必要な範囲を超えて汗をかいてしまう疾患です。暑さや運動によらず多量の発汗が生じ、日常生活に支障をきたす場合に多汗症と診断されます。

多汗症は大きく2種類に分類され、原因不明で局所的に発汗が過剰になる「原発性多汗症(局所性多汗症)」と、甲状腺機能亢進症など他の病気(自律神経障害や結核などの感染症)が原因で全身に汗をかく「続発性(全身性)多汗症」に分けられます(参考1)。

本記事では、多汗症を疑う場合のセルフチェック方法(部位別)の紹介と、多汗症の治療方法、さらに多汗症に関する基礎知識について解説していきます。

多汗症の部位別セルフチェック方法

まずは、自分が多汗症に該当するかどうか、部位ごとにセルフチェックしてみましょう。多汗症の症状は左右対称に現れやすく、睡眠中には発汗が収まるのが特徴です(参考1)。以下のセルフチェック項目に当てはまる数を確認し、汗の状態の程度を判断してみてください。

手や足の多汗症チェック

手のひら(手掌)や足裏に異常な発汗が起こる場合、「掌蹠多汗症」と呼ばれます。次の質問に当てはまるかチェックしてみましょう(参考1)。

  • 手足がいつも湿っていて冷たく,紫色調を帯びることがある
  • 運動後や暑い日以外でも足が蒸れて靴下が湿り、皮膚トラブル(例:水虫)を起こしやすい

これらに当てはまる項目があり、手足の発汗量が日常生活に影響している場合、掌蹠多汗症の可能性があります。

脇の多汗症チェック

脇の下に過剰な汗をかく場合(腋窩多汗症)も、以下の点を確認してみましょう。

  • 季節や気温に関係なく脇汗をかき、緊張すると服に大きな汗染みができることもある
  • 制汗剤や汗取りパッドでは汗を抑えきれず、一日に何度も服を着替える必要がある

以上に当てはまる場合、腋窩多汗症が疑われます。なお、多汗症と腋臭症(ワキガ)は原因となる汗腺や症状が異なります。多汗症ではエクリン汗腺からの汗が主体で無臭なのに対し、腋臭症はアポクリン汗腺からの分泌物によって特有の強い体臭が生じます(参考2)。

脇汗が大量でも臭いが強くない場合は多汗症の可能性が高く、少量の汗でも強い臭いがある場合は腋臭症が考えられます(両方を併発するケースもあります)。脇汗が多く日常生活に支障を来すようなら、早めに医師に相談することをおすすめします。

頭や顔の多汗症チェック

頭部や顔面に限って汗が多い場合は、頭部顔面多汗症と呼ばれます。次のセルフチェック項目を確認してみましょう。

  • 涼しい室内や短時間の軽い動作でも顔から汗が滴り落ちてしまう
  • 上半身はそうでもないのに頭や顔だけ汗をかくため、周囲から体調を心配されたり質問されたりする

これらの項目に心当たりがあれば、頭部・顔面の局所多汗症が疑われます。頭や顔だけ極端に汗をかく場合は多汗症の可能性が高いので、汗が目に入って支障が出るようであれば医師への診察を検討してください。

多汗症の治療方法

多汗症は生活習慣の工夫や市販の制汗剤だけでは十分に改善しないことも多いですが、医療機関で適切な治療を受けることで症状を大きく改善できる可能性があります。多汗症の主な治療法には次のようなものがあります(症状の重症度レベルに応じて選択されます)。

  • 外用薬による治療: 塩化アルミニウム液などの外用制汗剤を皮膚に塗布し、汗腺の開口部を塞ぐことで発汗を抑えます。夜間の塗布が推奨される第一選択の治療法です(参考3)。
  • 内服薬による治療: 抗コリン作用をもつ飲み薬は、全身の発汗を抑制する効果があります(参考3)。外用薬で十分な効果が得られない場合や、全身性多汗症など広範囲の発汗に対して用いられます。ただし、副作用もあるため慎重に使用されます。
  • 施術による治療: 手のひらや足裏には水道水イオントフォレーシス(微弱な電流を流す療法)が有用であるという研究報告があります(参考4)。また、脇の下や手のひら・足裏、顔面にはボツリヌス毒素(ボトックス)の局所注射療法が選択されることもあり、1回の治療で約半年間発汗を抑えることができます(参考5)。
  • 手術による治療: 重度の多汗症には、交感神経を切断する胸部交感神経遮断術(ETS)による根治的治療も検討されます(参考3)。ただし、この手術では代償性発汗(他の部位で汗が増える)という副作用が起こるリスクがあり、慎重な判断が必要です。

これらの治療を組み合わせることで、多汗症の症状は大きく改善することが期待できます。治療選択は患者さんの状態に合わせて行われるため、医師に相談して適切な方法を選ぶことが大切です。病院のホームページなどで最新の医療情報を得て、必要に応じて治療を進めましょう。

多汗症の基礎知識

原発性多汗症は若年で発症しやすく、しばしば家族にも同様の症状がみられます(参考1)。

多汗症と腋臭症の違い

多汗症と腋臭症(ワキガ)は、原因となる汗腺や症状が異なる別の種類の疾患です。多汗症はエクリン汗腺からの汗が主体で汗自体に強い臭いはありません。

一方、腋臭症はアポクリン汗腺から出る汗の成分を皮膚の常在菌が分解することで強い臭いを発する状態です。そのため、多汗症では上述した制汗治療が中心となりますが、腋臭症では臭いの原因となるアポクリン汗腺の除去手術や外用抗菌剤の使用などが行われます。(参考6)

多汗症と汗かきの違い

「汗っかき」と「多汗症」は別物です。汗かきの人は暑い環境や運動時に人より多く汗をかく体質ですが、それは生理的な範囲内の反応です。一方、多汗症では涼しい室内で安静にしている時でも必要以上の汗が出て、ストレスがない状況でも大量の汗が出てしまいます。

そのため、日常生活で明らかな支障や不安を感じる場合は単なる汗かきではなく多汗症を疑い、医師に相談し、必要な検査と診断を受けることが大切です。

まとめ

多汗症は本人の努力や生活習慣の改善だけでは解決が難しい発汗異常で、根本的な予防法も現在時点で確立されていませんが、適切な治療によって症状をコントロールできる病気です。部位別のセルフチェックで自身の汗の状態を振り返り、該当する症状があれば早めに医療機関を受診することをおすすめします。

なお、デジタルクリニックグループでは、オンラインで24時間365日で多汗症の診療が可能です。オンライン診療をご希望の場合、下記からご予約ください。

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多汗症は保険適用の治療も含めさまざまなアプローチが確立されています。一人で悩みを抱え込んだり放置したりせず、専門医に相談しましょう。

(参考1) 藤本智子ほか. 「原発性局所多汗症診療ガイドライン 2023 年改訂版」. 日本皮膚科学会雑誌. 2023;133(2):157-188. ​
(参考2) 久保村憲ほか. 「腋臭症患者における客観的臭気評価」. Plastic and Reconstructive Surgery-Global Open. 2022;10(10):e4622. ​
(参考3) Kisielnicka A, Szczerkowska-Dobosz A, Purzycka-Bohdan D, Nowicki RJ. “Hyperhidrosis: disease aetiology, classification and management in the light of modern treatment modalities.” Advances in Dermatology and Allergology/Postępy Dermatologii i Alergologii. 2022;39(2):251-257.
(参考4) Rahim Mほか. 「Comparison of the Efficacy of Tap Water Iontophoresis Versus Aluminum Chloride Hexahydrate in the Treatment of Palmoplantar Hyperhidrosis」. Cureus. 2022;14(12):e32367.
(参考5) 目崎高広ほか. 「ボツリヌス治療」. 神経治療. 2017;34(4):359-362.
(参考6) 清川兼輔ほか. 「形成外科診療ガイドライン」. 日本形成外科学会, 日本創傷外科学会, 日本頭蓋顎顔面外科学会. 2015.