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2025.04.20

脂質異常症の原因 | 診断基準や治療に使われる薬を詳しく解説

脂質異常症は放っておくとさまざまな合併症の危険因子になる生活習慣病の一つです。食事や運動などの生活習慣だけでなく、遺伝的な要因でも起こることがあり、重篤な合併症の発症につながることも。

この記事では、脂質異常症の原因や診断基準、治療薬などについて説明していきます。

脂質異常症になる主な原因

血液中の脂質が異常値を示す「脂質異常症」は、生活習慣や基礎疾患、遺伝などによって発症する病気です。脂質には、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)、HDLコレステロール(善玉コレステロール)、トリグリセライド(中性脂肪)があります。

脂質異常症のタイプには原発性と続発性があり、それぞれ原因が大きく異なります。

原発性

原発性の脂質異常症は、元々の体質や遺伝子異常が原因で引き起こされるタイプで、遺伝的要因に生活習慣や環境因子が加わって発症します。以下の5つの病型に分類され、100人に1〜2人の割合で見られます。(参考1)

  • 原発性高カイロミクロン血症(家族性リポ蛋白リパーゼ欠損症、アポリポ蛋白C-Ⅱ欠損症、原発性Ⅴ型高脂血症など)
  • 原発性高コレステロール血症(家族性高コレステロール血症、家族性複合型高脂血症)
  • 内因性高トリグリセライド血症(家族性Ⅳ型高脂血症、特発性高トリグリセライド血症)
  • 家族性Ⅲ型高脂血症
  • 原発性高HDLコレステロール血症

このなかでも家族性高コレステロール血症は遺伝子の影響が大きく、アキレス腱などに脂肪の塊ができて肥厚したり、黒目のふちにコレステロールの白い色素が沈着したり(角膜輪)するのが特徴的です。若い頃から狭心症や心筋梗塞などの冠動脈疾患に至るリスクも高いとされています。

出典:一般社団法人 日本内分泌学会「原発性脂質異常症」

続発性

続発性の脂質異常症は、基礎疾患や生活習慣などのさまざまな要因によって引き起こされるタイプです。高コレステロール血症と高トリグリセライド血症で原因が異なります。

【高コレステロール血症】

  • 甲状腺機能低下症
  • 糖尿病
  • 腎臓や副腎に関わる病気(ネフローゼ症候群、クッシング症候群)
  • 肝臓に関わる病気(原発性胆汁性肝硬変、閉塞性黄疸)
  • 特定の薬剤の投与(利尿薬や経口避妊薬など)

【高トリグリセライド血症】

  • 過度な飲酒
  • 肥満
  • 糖尿病
  • 全身性エリテマトーデス(※)
  • 血清蛋白異常症
  • 腎臓や副腎に関わる病気(尿毒症、クッシング症候群)
  • 特定の薬剤の投与(利尿薬や経口避妊薬など)

(※)自己免疫性疾患の一つ

そのほか、過食や運動不足、喫煙、過剰なストレスも両タイプの脂質異常症を悪化させます。続発性の場合、基礎疾患の治療や生活習慣の改善で数値が正常化するケースが多く見られます。

出典:一般社団法人 日本内分泌学会「続発性脂質異常症」

脂質異常症とはどんな病気?

脂質異常症は、LDLコレステロールやHDLコレステロール、トリグリセライドが異常値を示す状態です。

LDLコレステロールは肝臓から全身にコレステロールを運ぶ脂質で、動脈硬化の進行に大きく関与しています。一方でHDLコレステロールは、血管の余分なコレステロールを肝臓に運ぶ、体に良い働きをする脂質です。トリグリセライドは主に体内のエネルギーになります。

これらの脂質にはそれぞれ基準値があり、さまざまな原因によってこの基準値から外れることで診断されます。自覚症状は少ないですが、放っておくと動脈硬化のリスクが高まり、さまざまな合併症につながる可能性が高くなるため、定期的に健康診断を受けることが重要です。

脂質異常症の概要についてさらに詳しく知りたい方はこちらもご覧ください。

脂質異常症の診断基準

脂質異常症の診断基準は以下になります。(参考3)

脂質基準値診断
LDLコレステロール140mg/dL以上高LDLコレステロール血症
120〜139mg/dL境界域高LDLコレステロール血症
HDLコレステロール40mg/dL未満低HDLコレステロール血症
トリグリセライド空腹時採血で150mg/dL以上高トリグリセライド血症
随時採血で175mg/dL以上
Non-HDLコレステロール(※)170mg/dL以上高non-HDLコレステロール血症
150~169mg/dL境界域高non-HDLコレステロール血症

出典:一般社団法人 日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン 2022年版」

(※)総コレステロールからLDLコレステロールを引いた値

脂質異常症は肥満の方に起こりやすい印象がありますが、栄養バランスの偏った食事や遺伝的要因などでコレステロール値や中性脂肪値が基準値から外れていれば、痩せている人でも発症します。医療機関で脳梗塞や冠動脈疾患、高血圧症などの合併症リスクがあると判断された場合などは、生活習慣の指導に加えて薬物療法も行われるのが一般的です。

脂質異常症の診断基準は、こちらでも詳しく解説していますのでぜひご覧ください。

脂質異常症の治療に使われる薬

脂質異常症では、脂質の値によって以下のような薬剤が使用されます。

【LDLコレステロールを下げる薬】

スタチン系製剤:肝臓でコレステロールの合成を抑制する

陰イオン交換樹脂:胆汁酸の排出を増加させることでコレステロールの体外への排泄を促す

小腸コレステロールトランスポーター阻害薬:小腸でのコレステロールの吸収を阻害する

【トリグリセライドを下げる薬】

フィブラート系製剤:肝臓や腸でトリグリセライドの合成を抑制する

EPA(魚の脂に含まれる成分)製剤:中性脂肪を減らしたり、血液を固まりにくくしたりする

さらに詳しい効能や副作用などを知りたい場合は、こちらをご覧ください。

脂質異常症の改善方法

脂質異常症の治療には、生活習慣の改善が極めて大切です。具体的には以下になります。

  • 食生活の改善

肉の脂身や卵黄、乳製品、マーガリンなどの飽和脂肪酸を控え、魚類、オリーブオイルなどの不飽和脂肪酸の摂取を意識しましょう。大豆製品や野菜、果物、海藻などを積極的に取り入れ、糖質や塩分の摂取も控えてください。

しかし、乳製品の一つであるヨーグルトなどはコレステロールの吸収を抑えたり、腸内環境を整えたりする作用を持ちます。食事に取り入れる場合は、糖質オフの製品にして摂りすぎないことが大切です。

  • 運動習慣の継続

有酸素運動を1日30分以上もしくは週180分以上継続することが大切です。(参考4)

速歩やスロージョギング、水泳、サイクリングなど、中等度(ややきついと感じる程度)の運動を続けましょう。運動習慣は体力を維持・向上させるだけでなく、HDLコレステロールの上昇やトリグリセライドの低下も期待できます。

そのほか、過剰な飲酒や喫煙も避けるようにしましょう。アルコール量は1日20〜25g以下(おおよそ日本酒1合以下、ビール500mL以下)にし、受動喫煙含む喫煙も控えてください。(参考4、参考7)過食を抑え、体重も適正にすることも脂質異常症の改善や予防に必要です。

脂質異常症の改善方法についてより詳しく知りたい方はこちらもご覧ください。

まとめ

脂質異常症には遺伝的要因で起こる原発性と、生活習慣が影響する特発性のタイプがあります。どれも体内の脂質が異常値を示すことで発症し、放っておくと動脈硬化のリスクが高まって重篤な合併症につながる可能性があるため注意が必要です。脂質異常症の進行を見逃さないためにも、定期的に健康診断を受けるようにしましょう。

また、薬の処方が必要な場合は、デジタルクリニックのオンライン診療がおすすめです。場所や時間を問わず受診でき、ビデオ電話で医師の診察を受けながら薬を処方してもらえます。処方された薬はご自宅まで郵送するサービスも承っていますので、ぜひご利用ください。

参考文献

(参考1)一般社団法人 日本内分泌学会「原発性脂質異常症」

(参考2)一般社団法人 日本内分泌学科尾「続発性脂質異常症」

(参考3)一般社団法人 日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン 2022年版」

(参考4)一般社団法人 日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症治療のエッセンス」

(参考5)一般社団法人 日本動脈硬化学会「家族性高コレステロール血症(FH)とは?」

(参考6)厚生労働省 e-ヘルスネット「脂質異常症」

(参考7)厚生労働省 e-ヘルスネット「脂質異常症(実践・応用)」

(参考8)全国健康保険協会 協会けんぽ「【脂質異常症】 コレステロールと中性脂肪がたまると…」