fbpx

2025.04.20

ニキビダニとは | 特徴や症状、ニキビとの見分け方を詳しく解説

ニキビダニは、顔に常在しているダニの一種で通常は皮膚にマイナスな影響はありませんが、過剰に増殖した場合、肌トラブルの原因となる場合があります。この記事では、ニキビダニの特徴や症状、ニキビとの見分け方、治療法や予防法について詳しく解説します。

ニキビダニの基礎知識

ニキビダニ(毛包虫)は、人間の皮膚に常在して寄生するダニの一種で「顔ダニ」とも呼ばれています。肉眼では見えないほど小さく、主に顔の皮脂腺やマイボーム腺(まぶたの縁にある脂腺)に生息しています。

ヒトには主に2種類のニキビダニが存在します。

  • ニキビダニ(Demodex folliculorum)

毛包漏斗部に生息し、体長は約0.2〜0.4mの大きさ(参考1)

  • コニキビダニ(Demodex brevis)

皮脂腺やマイボーム腺に存在し、体長はDemodex folliculorumよりやや短め(参考1)

通常、ニキビダニは皮脂をエサとして、皮膚の健康維持に役立っています。皮脂の産生が少ない子供にはあまり見られませんが、加齢とともに寄生率が上がり、60歳では64%、70歳以上では95%の人に存在するといわれています。(参考1)

ニキビダニは頬ずりなどの皮膚接触によって人から人へ伝わるのが特徴です。女性より男性に寄生しやすいと言われています。

ニキビダニの特徴

ニキビダニの代表的な特徴は下記の4つです。

  1. 皮脂を栄養源とする

ニキビダニは皮脂を主なエサとし、顔のように皮脂分泌が多い部位に好んで生息します。

  1. 皮膚の健康維持に役立つ

皮脂の分解や真菌・細菌の捕食をするなど、皮膚のメンテナンスを行う場合があります。

  1. 寿命がある

ニキビダニの寿命は14日から18日間といわれています。(参考2)

  1. 特定の要因で増殖する

ステロイド外用薬の使用、誤った洗顔方法、スキンケア不足などで増殖します。(参考3)増殖すると、ニキビに似た皮膚症状が生じます。

顔ダニとニキビの見分け方

ニキビダニによる皮膚症状と一般的なニキビは似ている場合がありますが、次の特徴で見分けることができます。

まず、原因が異なります。ニキビダニ症はニキビダニの過剰増殖によって引き起こされるのに対し、一般的なニキビはアクネ菌の増殖や皮脂の過剰分泌が主な原因です。

見た目の違いとしては、ニキビダニ症では鱗屑(りんせつ:角質が白く細かく剥がれたもの)を伴う紅斑(皮膚の赤み)が特徴的で、皮膚表面がサンドペーパー状の質感になることがあります。一方、一般的なニキビは炎症性の赤いぶつぶつや黒ずみ、白ニキビといった形で現れることが多いです。

発生部位も異なる傾向があります。ニキビダニ症は主に頬に発生し、時に鼻や額にも現れますが、一般的なニキビは顔全体だけでなく背中や胸などにも出る場合があります。

症状の違いも重要な判断ポイントです。ニキビダニ症はかゆみや灼熱感を伴うケースが多いのに対し、一般的なニキビは痛みを伴うケースが多く、かゆみはあまり感じないことが特徴です。(参考6)

ニキビダニによる症状

ニキビダニが過剰に増殖すると、さまざまな皮膚症状を引き起こします。

  • 頬や鼻の皮膚の赤み
  • サンドペーパーのような肌質
  • 軽度の刺激感や灼熱感、かゆみ

ニキビダニによる皮膚症状は、灼熱感、かゆみが見られ、ニキビのような強い炎症がないのが特徴です。ステロイド外用薬などの市販薬を使用すると症状が悪化することがあるため、疑わしい症状が見られたら医師に受診すべきです。

ニキビダニの治療方法

ニキビダニによる皮膚症状が生じている場合、以下の薬剤を組み合わせて治療します。

  • 外用薬

テトラサイクリン系の抗生物質

  • 内服薬

メトロニダゾール(抗原虫剤)

イベルメクチン(駆虫剤)(参考3)

治療には個人差があり、症状の程度にあわせた正しい治療法選びが欠かせません。症状が気になる場合は、皮膚科を受診して専門医に相談しましょう。

ニキビダニの予防方法

ニキビダニには日常的に以下の予防法を続けましょう。

1.正しい洗顔

石けんやソープを使用して丁寧に顔を洗い、肌に合った洗顔せっけんを選びます。洗顔後は清潔なタオルで優しく拭き取ります。

2.スキンケア

洗顔後には化粧水や乳液で保湿ケアを行います。

3.生活習慣の改善

バランスの取れた食生活を心がけ、十分な睡眠と適度な運動を行いながら、ストレス管理も心がけます。

4.その他の注意点

症状が現れても、ステロイド外用薬の使用は避けましょう。(参考3)(参考7)また、他人とタオルは共用せず、寝具は定期的に洗濯して交換することが推奨されます。

これらのポイントを守ってニキビダニの繁殖を防ぎましょう。

ニキビの基礎知識

ニキビは、次のようなメカニズムでできる皮膚疾患です。

1.原因

ニキビの原因はアクネ菌の増殖です。過剰な皮脂分泌による毛穴の詰まりや、ホルモンバランスの乱れなどでアクネ菌の活動が活発となります。

2.ニキビの種類

  • 白ニキビ(コメド)

毛穴が角質や皮脂で詰まった状態

  • 黒ニキビ

酸化した皮脂が黒く見える状態

  • 赤ニキビ

炎症を起こして赤い盛り上がりができた状態

  • 黄ニキビ

膿がたまった状態

3.できやすい部位

顔(特にTゾーン)、胸、背中など皮脂腺の多い部位

ニキビの治療には、洗顔料や化粧水などの基礎化粧品を見直したり、生活習慣を改善したりする自己対策に加え、症状が重い場合は医療機関での治療が必要になります。

ニキビ治療に使われる薬

ニキビ治療では、外用薬や内服薬、市販薬などのさまざま薬物療法があります。

1.外用薬(塗り薬)

  • 過酸化ベンゾイル

アクネ菌を殺菌し、毛穴の詰まりを解消する効果があります。

  • アダパレン

毛穴の詰まりを解消し、新しいニキビの形成を防ぎます。

  • 抗生物質外用薬

クリンダマイシンなどで、炎症を抑制します。(参考4)(参考5)

2.内服薬

  • 抗生物質

ドキシサイクリンやミノサイクリンなどが使用され、炎症を抑制します。

  • ビタミン剤

ビタミンB群などが使用され、皮脂の過剰分泌を抑えることがあります。

  • 漢方薬

体質の改善を目的として使用されることがあります。(参考4)(参考5)

3.市販薬など

  • 薬用洗顔料

皮脂のコントロールや殺菌効果のある成分が配合されています。

  • 薬用ローション

殺菌成分や炎症を抑える成分がニキビの予防・改善に役立ちます。

  • スポット用塗り薬

色素沈着したニキビ跡に効果が期待できるハイドロキノン配合のタイプなどがあり、患部に直接塗布することでニキビに効果を発揮します。

重症のニキビや、市販薬で改善しない場合は、医師の元を受診しましょう。ニキビは、医療機関の保険適用で治療を受けられるケースが多いですが、なかにはケミカルピーリングやイオン導入といった自費診療もあります。

ニキビの薬について詳しくは「ニキビ 薬」内部リンク をご覧ください。

まとめ

ニキビダニは顔に常在するダニの一種であるため、普段は害はありません。しかし、過剰に増殖すると様々な皮膚トラブルを引き起こす恐れがあります。

ニキビダニによる症状とニキビの症状は似ていることがありますが、治療法が異なるため、区別が必要です。通常のニキビ治療で改善しない場合や、かゆみや灼熱感を伴う場合は、ニキビダニかもしれませんので、医師の元を受診しましょう。

ニキビダニの過剰増殖を防ぐには、日常的に正しい洗顔やスキンケア、生活習慣の改善に努めることが重要です。症状が気になる場合は、早めに皮膚科を受診して、専門医による診断・治療を受けましょう。

【参考文献】

(参考1)天理よろづ相談病院「第 119 回日本皮膚科学会総会 ㉓ 教育講演45-3 ニキビダニ症(毛包虫症)」

(参考2)Spickett  SG. Studies on Demodex folliculorum Simon (1842). I. Life history. Parasitology 1961;51:181-192.

(参考3)天理よろづ相談所病院「ニキビダニ症の1例」

(参考4)公益社団法人日本皮膚科学会「皮膚科Q&A:にきび」

(参考5)日本皮膚科学会「尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023」

(参考6)Ayres  S Jr. Pityriasis folliculorum (Demodex). Archives of Dermatology and Syphilology 1930;21:19-24.

(参考7)Hong JS, Han S, Lee JS, et al. Abnormal glucocorticoid synthesis in the lesional skin of erythematotelangiectatic rosacea. J Invest Dermatol 2019;139:2225-2228.e2223.