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2025.04.14

漢方薬で高血圧治療 | おすすめの人や使用方法を詳しく解説

最近の高血圧の治療には、西洋薬だけでなく漢方薬にも注目が集まっています。漢方薬は血圧を下げる効果が期待できるだけでなく、不眠やめまいといった随伴症状も同時に改善できる特徴があります。

そこでこの記事では、高血圧症に使用される代表的な漢方薬と使用方法について紹介します。

高血圧症に使われる漢方薬

高血圧症の治療に用いられる漢方薬は、患者さんの体質や症状によって使い分けることが基本です。漢方医学では、同じ高血圧でも、その人の体質や生活環境、ストレス状態などによって処方する漢方薬を変えていきます

代表的な4種類の方剤の特徴を一つずつ見ていきましょう。

芍薬甘草湯

芍薬甘草湯(シャクヤクカンゾウトウ)は、筋肉のこわばりや痙攣を伴う高血圧の方に使われる漢方薬で、肩こりや筋緊張が強い方の血圧治療に効果的です。血液の巡りを良くし、全身に栄養を運ぶことで、あらゆる症状の改善につなげます。

芍薬(シャクヤク)と甘草(カンゾウ)の2種類の生薬だけで構成される薬剤です。

【本剤がおすすめの方】

  • 肩や首の筋肉が常に緊張している
  • ストレスで体が硬くなりやすい
  • 冷えや疲れで筋肉がつりやすい

柴胡加竜骨牡蛎湯

柴胡加竜骨牡蛎湯(サイコカリュウコツボレイトウ)は精神不安があって、動悸、不眠、便秘などを伴う高血圧の方におすすめの漢方薬です。漢方では「気」の巡りが滞ることで様々な症状が出ると考えており、複数の生薬の組み合わせによって気の流れを整える働きがあります。

主に柴胡(サイコ)や竜骨(リュウコツ)・牡蛎(ボレイ)などの生薬を中心に配合されています。

【本剤がおすすめの方】

  • 精神的な不安がある
  • ストレスやイライラが強く、不眠がち
  • 動悸や息切れがする

大柴胡湯

大柴胡湯(ダイサイコトウ)は体力がある程度あって、便秘や肥満傾向にある方の高血圧に効果的です。特に内臓脂肪の蓄積による高血圧に有効だと言われています。柴胡の量が多く配合されており、気の巡りの改善効果や脂肪代謝促進でより強い作用を持ちます。

主な構成生薬として、柴胡のほか黄芩(オウゴン)や大黄(ダイオウ)などが含まれます。

【本剤がおすすめの方】

  • 便秘がちで体重が増加しやすい
  • みぞおちから脇腹にかけて不快感がある
  • ストレスで食べ過ぎてしまう

釣藤散

釣藤散(チョウトウサン)は、慢性的な頭痛やめまい、耳鳴り、肩こりなどを伴う高血圧の方に適しているタイプです。自律神経の働きや血流を整えることで、全身の不調を改善していきます。

釣藤鈎をはじめ石膏(セッコウ)、陳皮(チンピ)、防風(ボウフウ)などが主な構成生薬です。

【本剤がおすすめの方】

  • 体力中等度で、慢性的な頭痛やめまいがある方
  • イライラや不安感を伴う高血圧の方
  • 肩こりが強く、首や肩の血行が悪い方

漢方薬の使用方法

漢方薬の効果を正しく引き出すためには、適切な使用方法を守ることが大切です。特に生活習慣病である高血圧の治療では、毎日処方通り服用することと、定期的に通院することが欠かせません。

1.服用のタイミング

漢方薬は、食前(食事の1時間〜30分前)に服用するのが基本です。薬によって異なりますが、朝・夕の1日2回または朝・昼・夕の1日3回服用が一般的です。毎日できるだけ同じ時間に服用する習慣をつけましょう。

2.用量を守る

漢方薬では多くの場合、成人は通常1回1包を服用します。症状が改善したからといって自己判断で量を変更するのは避け、必ず医師の指示に従いましょう。

3.継続的な服用が大切

高血圧で使われる漢方薬は即効性というよりも、徐々に体質を改善していく薬剤です。効果が現れるまで、一般的に2〜4週間程度必要となります。

漢方薬を使用する際の注意点

漢方薬は生薬を原料とする医薬品で、副作用のリスクもあります。以下のポイントに注意して服用しましょう。

  • 医師や薬剤師に相談してから使用を開始する
  • 他の薬との相互作用に注意する
  • 体質や症状に合った漢方薬を選択する
  • 定期的に血圧測定を行い、効果を確認する
  • 副作用が出た場合は直ちに医師や薬剤師に相談する

漢方薬を服用して何らかの健康被害が出た場合は、できるだけ早く医師や薬剤師に相談してください。

高血圧の漢方薬治療はどんな人におすすめ?

漢方薬による高血圧治療は、特に下記のような方におすすめです。

1.軽度の高血圧の方

漢方薬を中心に高血圧治療をする場合、血圧が極端に高くない段階での治療開始が望ましいです。

日本高血圧学会によると、正常血圧とは、診察室での収縮期血圧(最大血圧)が120mmHg以下かつ拡張期血圧(最小血圧)が80mmHg以上を指します。高血圧の診断基準は、診察室での収縮期血圧(最大血圧)が140mmHg以上、または拡張期血圧(最小血圧)が90mmHg以上です。

出典:日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン 2019」

家庭血圧も参考に、医師に相談の上、生活習慣の改善と組み合わせることで、西洋薬(化学的に合成された薬)による降圧薬の使用を最小限に抑えられる可能性があります。

2.様々な随伴症状がある方

以下のような高血圧に伴う諸症状がある方は、漢方薬による治療が有効です。

  • めまいや頭痛が頻繁にある
  • 肩こりや首の凝りが強い
  • 不眠やイライラがある
  • 動悸や息切れを感じる

漢方薬は血圧を下げるだけでなく、身体的・精神的症状も同時に改善する働きが期待できます。

3.ストレス関連の高血圧の方

現代社会では、仕事や人間関係のストレスによる高血圧が増えています。漢方薬は自律神経のバランスを整え、ストレスに対する身体の反応を和らげる効果があるため、過剰なストレスによって血圧が高い方の治療に向いています。

4.更年期以降の方

ホルモンバランスの変化や自律神経のアンバランスによる高血圧は、漢方薬が効果的です。特に、のぼせやめまいなどの更年期特有の症状がある場合にもおすすめです。

5. 体質改善を目指したい方

根本的な体質を改善させたい方には漢方薬がおすすめです。運動や食事などの生活習慣の見直しも行い、継続して服用するとより効果的な血圧管理を目指せます。

高血圧になる原因

高血圧は、生活習慣や環境要因、遺伝的要因など、様々な要素が組み合わさって発症します。

主な原因は次の通りです。

  • 過度な塩分摂取
  • 運動不足
  • 慢性的なストレス
  • 喫煙や過度な飲酒
  • 肥満
  • 加齢
  • 遺伝

特に日本人は食生活の影響から過剰な塩分摂取が高血圧の原因になりやすく、適切な対策を取る必要があります。高血圧の原因や対策についてより詳しく知りたい方は、「高血圧 原因」内部リンクをご覧ください。

参照:国立循環器病研究センター「高血圧」

まとめ

高血圧の治療には、その人の体質や症状に合わせた漢方薬選びが大切です。芍薬甘草湯、柴胡加竜骨牡蛎湯、大柴胡湯、釣藤散など、高血圧でよく使われる漢方薬にはそれぞれ特徴があります。また、血圧を下げるだけでなく、不眠や頭痛、めまいなどの随伴症状も同時に改善できます。

特に軽度の高血圧の方は、漢方薬と生活習慣の改善を組み合わせることで、西洋薬をできるだけ使用せず治療することも可能です。

ただし、高血圧は生活習慣病の一種です。漢方薬による治療を始める際は、まず医師に相談してください。定期的な血圧測定と経過観察を受けながら、生活習慣の見直しも含めた継続的な治療を進めましょう。

【参考文献】

ツムラ「ツムラ漢方芍薬甘草湯エキス顆粒」

ツムラ「ツムラ漢方柴胡加竜骨牡蛎湯エキス顆粒」

ツムラ「ツムラ漢方大柴胡湯エキス顆粒」
ツムラ「ツムラ漢方釣藤散エキス顆粒」

日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン 2019」

国立循環器病研究センター「高血圧」

日本臨床漢方医会「漢方Q&A - 漢方薬について⑭効き目の目安とは?」