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2025.04.14

多汗症治療に使われる漢方薬 | 効能や種類、その他の治療方法を解説

多汗症でお悩みの方のなかには、漢方薬による治療に不安を感じる方も多いのではないでしょうか。漢方治療は体質改善から症状の緩和を目指すアプローチとして注目されています。また、近年では漢方薬とオンライン診療を組み合わせた治療も可能になり、より相談しやすい環境が整ってきました。

そこでこの記事では、多汗症に用いられる漢方薬の種類や効果、その他の治療法について詳しく解説します。

多汗症の基礎知識

多汗症は、体温調節に必要な量以上の汗が出る症状で、精神的なストレスや緊張による自律神経の乱れが原因です。手のひらや手掌部、わきの下などから大量の発汗が見られます。

重症の方の場合、滴り落ちるほどの汗によって日常生活に支障をきたす方もあり、特に以下のような問題で悩まれるケースが多いです。

  • 汗のせいで書類やスマートフォンの操作が困難になる
  • 握手や物の受け渡しが汗で滑るためしづらい
  • 服に汗染みができて恥ずかしい
  • 大量の汗による体臭が気になる

詳しい情報は「多汗症とは」(内部リンク)をご覧ください。

多汗症に効果的とされる漢方薬と効能

漢方薬の処方は、患者さんの体質や症状のタイプによって異なります。多汗症では、医師や薬剤師との相談のもと、次のような漢方薬が処方されます。

防已黄耆湯

多汗症治療でよく使用される防已黄耆湯(ぼうぎおうぎとう)は、むくみを伴う方に特に効果が期待できます。主な生薬である黄耆(おうぎ)や防已(ぼうぎ)には、水分代謝を改善し、過剰な発汗を抑制させる働きがあります。

◎本剤が合う患者さんの特徴

  • 汗をかきやすく、むくみやすい体質
  • 体力が中程度以上の方
  • 水太りしやすい傾向がある方
  • 余分な水分がたまりやすい体質

生姜などの生薬も配合されており、冷えの改善効果も期待できます。

瀉火補腎丸

瀉火補腎丸(しゃかほじんがん)は、体内の熱分と水分のバランスの乱れによる発汗が気になる方に合う漢方薬で、特に下記のような症状に効果を発揮します。

◎本剤が合う患者さんの特徴

  • 寝汗に悩む更年期の方
  • 精神的な緊張による発汗が気になる方
  • ストレスによる多汗にお困りの方
  • 顔面のほてりを伴う発汗が気になる方

体力が少し落ちていて、疲れやすく、胃腸障害がない方に向いています。

桂枝加竜骨牡蛎湯

桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)は、自律神経のバランスを整える効果があります。神経過敏でイライラや不眠によく処方されていて、桂枝(けいし)や甘草(かんぞう)など複数の生薬が配合されています。

◎本剤が合う患者さんの特徴

  • 精神的な緊張による発汗に悩む方
  • 冷えを伴う多汗が続く方
  • 不安や緊張を感じやすい方
  • 四肢の冷えがある方
  • 虚弱体質の方

自律神経の働きを整えることで、交感神経の過度な興奮状態を抑制し、発汗の正常化を目指します。

柴胡加竜骨牡蠣湯

ストレスや緊張による自律神経の乱れが原因の多汗症に使用される柴胡加竜骨牡蠣湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)は、次のような方におすすめです。

◎本剤が合う患者さんの特徴

  • 体質的に虚弱な方
  • 精神的なストレスを感じやすい方
  • 不眠や緊張を伴う方
  • 高血圧に伴う動悸や不安のある方
  • 便秘など胃腸の調子が悪くなりやすい方

この他、体質や症状に応じて、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)や白虎加人参湯(びゃっこかにんじんとう)、五苓散(ごれいさん)など体力回復やむくみ改善に適した方薬もあります。

漢方薬以外の多汗症の治療方法

漢方薬以外の多汗症の治療方法では、内服薬や外用薬、注射、手術などがあります。

内服薬での治療

内服薬では、主に交感神経に作用する薬剤が処方されます。交感神経の過剰な働きを抑えることで汗腺からの発汗を抑制する効果がありますが、便秘や口渇などの副作用に注意が必要です。抗コリン薬などが一般的に使用されます。

外用薬での治療

外用薬では、皮膚に直接塗布する塩化アルミニウム製剤の塗り薬が代表的です。特に手掌部やわきの下の多汗症に効果が期待できます。

出典:[添付文書]「エクロック (エクロックゲル5%)」

その他の治療方法

内服薬や外用薬と併せて、次のような治療方法も選択肢です。

・イオントフォレーシス(低周波療法)

水道水に微弱な電流を流すことで発汗を抑制する治療方法で、手掌や足底の多汗症に効果的です。

・ボツリヌス注射治療

アセチルコリン(交感神経から発汗の指令を出す物質)を抑制するボツリヌスを局所注射する方法です。わきの下の多汗症に保険適用される場合があります。

・外科的治療

内視鏡で胸部の交感神経を切除する「交感神経遮断術」が代表例ですが、重症例の場合に行われます

出典:日本皮膚科学会「原発性局所多汗症診療ガイドライン」
出典:日本皮膚科学会「汗の病気―多汗症と無汗症― – 皮膚科Q&A」

まとめ

多汗症の漢方治療は、体質改善を通じて症状の緩和を目指します。どの処方が良いかは、患者さんの体質や症状などによって異なります。薬局やドラッグストアの店頭には、ツムラやクラシエなど様々な漢方薬メーカーの方剤が並んでいますが、特に高齢の方や持病のある方が使用する際は必ず医師や薬剤師に確認してください。

また、漢方薬は即効性の期待できるものもありますが、基本的にじっくりと体質を改善していく方薬です。薬効を実感するまでには通常2〜4週間程度かかることを理解した上で、服用することをおすすめします。

不安な症状がある場合は、一人で悩まず、医師や薬剤師など専門家に相談しましょう。オンライン診療の普及により漢方治療への相談がより身近になっていますので、積極的に活用してみてください。

【参考文献】

日本皮膚科学会「原発性局所多汗症診療ガイドライン」
日本皮膚科学会「汗の病気―多汗症と無汗症― – 皮膚科Q&A」

ツムラ「ツムラ漢方防已黄耆湯エキス顆粒」

イスクラ産業株式会社「イスクラ瀉火補腎丸」

ツムラ「ツムラ漢方桂枝加竜骨牡蠣湯エキス顆粒」
ツムラ「ツムラ漢方柴胡加竜骨牡蛎湯エキス顆粒」

[添付文書]「エクロック (エクロックゲル5%)」