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2025.04.14

多汗症とは | 原因やセルフチェック方法、治療方法を詳しく解説

「多汗症」は、必要以上に汗をかく症状で、日常生活で汗の量が気になっている方は少なくありません。特に手掌(てのひら)の多汗症は人口の5.3%、実は20人に1人程度が経験する比較的ありふれた症状となっています。

多汗症は皮膚科の治療で症状の改善が期待できる病気ですが、恥ずかしさから受診をためらう方も多いです。

そこでこの記事では、多汗症の特徴や原因、セルフチェック方法、さまざまな治療法について詳しく解説します。

多汗症はどんな病気?

多汗症はどのような病気なのか、症状や原因、種類を見ていきましょう。

多汗症の特徴や症状

多汗症とは、体温調節に必要な量以上に汗が出る症状のことです。季節や気温に関係なく、精神的な緊張やストレスで過剰な発汗が起こるのが特徴です。

主な症状や悩みとして以下が挙げられます。

  • 手掌やわきの下から大量の汗が出る
  • 汗で書類やスマートフォンが扱いづらくなる
  • 汗染みが気になり、服装の選択に制限がある
  • 人との接触を避けたくなる
  • 握手や物の受け渡しが困難になる
  • 日常生活や仕事、学業に支障をきたす

特に手掌多汗症は幼少期から、腋窩多汗症は思春期から、頭部や顔面の多汗症は成人してから発症することが多いとされています。

多汗症の原因

多汗症の発症メカニズムには、主に3つの要因が関係していると言われています。

1. 自律神経系の過剰反応

精神的なストレスや緊張により、交感神経が必要以上に反応してしまい汗腺を刺激します。脳からの指令で交感神経からアセチルコリンが放出され、それが汗腺に作用して大量の汗が分泌されます。

2. 遺伝的要因

家族歴がある場合も多く、遺伝的な影響も指摘されています。

3. 体質的な特徴

人の体には約200万~500万個のエクリン汗腺があります。多汗症の方は1つの汗腺から出る汗の量が多く、活発に働く汗腺の割合も高いとされています。

ただし、これらが起こるはっきりした原因はまだ解明されていません

多汗症の種類

多汗症には、大きく分けて次の2つのタイプがあります。

1. 局所性多汗症

手掌、わきの下、足の裏など、特定の部位に限局して過剰な発汗が見られます。多汗症

の最も一般的なタイプです。症状が重い場合は、汗のしずくがポタポタ落ちるレベルの発汗がみられ、手足が冷たく紫色を帯びることもあります。

2. 全身性多汗症

全身で過剰な発汗が起こるタイプです。基礎疾患が原因となっていることが多いため、医療機関での精査が重要です。甲状腺機能亢進症や糖尿病などが隠れている可能性があります。

多汗症のセルフチェック方法

次の6つの項目のうち2つ以上当てはまる方は、多汗症の可能性があります。

  • 25歳以下で発症している
  • 左右対称に発汗が見られる
  • 睡眠中は発汗が止まる
  • 週に1回以上汗で困ることがある
  • 家族に同様の症状がある人がいる
  • 日常生活に支障をきたしている

多汗症のセルフチェック方法について詳しく知りたい方は、こちら(「多汗症 チェック」内部リンク)も合わせてご覧ください。

多汗症の治療方法

多汗症の治療方法は、内服薬と外用薬、その他の治療方法の3つがあります。

内服薬での治療

多汗症の内服薬では、抗コリン薬(プロパンテリン臭化物など)が主に処方されます。交感神経から汗を出すための指令を与えるアセチルコリンの働きをさまたげ、発汗量を減らす薬剤として広く処方されています。ただし、口渇や便秘などの副作用に注意が必要です。

外用薬での治療

多汗症の外用薬では主に以下の2種類が代表的です。

1. 塩化アルミニウム製剤

局所性多汗症の第一選択薬として使用されます。20~50%の塩化アルミニウム溶液を就寝前に塗布します。効果は2~3週間で現れ始めます。

2. 抗コリン外用薬

2020年に原発性腋窩多汗症のみ保険適用で新しい外用薬「5%ソフピロニウム臭化物ゲル製剤(エクロックゲル)」が登場しました。1日1回就寝前に腋窩に塗布し、外用部分にのみ作用します。

その他の治療方法

注射や手術など内服薬や外用薬とは異なるアプローチもあります。ここでは主な治療方法を3つ紹介します。

1. ボツリヌス注射治療

ボツリヌス注射治療は、アセチルコリンを抑制する局所注射です。わきの下の多汗症には保険適用があり、高い効果が期待できます。効果は約6ヶ月間持続します。手掌や足底、頭部顔面の場合は、自費診療となります。

2. イオントフォレーシス

イオントフォレーシスは、手掌や足底の多汗症に効果的な治療法です。水道水に微弱な電流を流すことで発汗を抑制します。1回20〜30分の治療を8〜12回行うことで効果が現れます

3. 手術療法(交感神経遮断術)

内視鏡で胸部の交感神経を切除する手術も有効な選択肢の一つです。ただし、体温調節としての発汗の役割においてバランスが崩れ、患者さんの他の部位から大量の汗が出る「代償性発汗」という副作用があるため、慎重な検討が必要です。

出典:日本皮膚科学会「汗の病気―多汗症と無汗症― – 皮膚科Q&A」

まとめ

多汗症は日常生活に大きな影響を与える可能性がある症状ですが、様々な治療法があり、皮膚科のアプローチによって症状の改善が期待できます。最近では抗コリン外用薬のような新しい外用薬も登場し、治療の選択肢が広がっています。気になる症状が続き受診のタイミングを迎えた際は、まずは皮膚科など医療機関で相談することがおすすめです。

【参考文献】

日本皮膚科学会「原発性局所多汗症診療ガイドライン」

日本皮膚科学会「汗の病気―多汗症と無汗症― – 皮膚科Q&A」

[添付文書]「エクロック (エクロックゲル5%)」

日本医師会「Vol.1 思春期の多汗症|健康ぷらざPlus」

日経メディカル「原発性腋窩多汗症を治療する国内初の外用薬」

メタディスクリプション:多汗症の原因、症状、診断方法から最新の治療法まで詳しく解説。手掌多汗症、腋窩多汗症などの部位別の特徴や治療選択肢について、最新の医学情報に基づいて分かりやすく説明しています。多汗症でお悩みの方向けにおすすめの情報を提供します。